第6話 PLAYER_2_READY...

「それでは! お二人の未来に幸あられ~~~!!」


 パウパウと女神様の変なエールと花吹雪に見守られながら意識は沈み……

次の瞬間、見知らぬ部屋で目が覚めた。


 どうやら本当に転生してしまったらしい。前世の記憶……ゲーム知識と、キャラクターの記憶が並行して頭の中にしっかりと刻まれている。キャラクターとしての人格も残っているようで、なんですのなんですのとずっと騒ぎ立てている。なんだか妙な感覚だ。



 ………で、だ。

確かに私は「救えぬ者を救いたい」と思った。でもね?



▽ワルミ

「まさかとは思っていませんでしたわよ、ええ」



 ………そう、私が転生したのは……何を隠そう明都院 割美。ヤバいですわ。どうしますの。どうしますのコレ。邪神なんかになりたくないですわよ。え? だったら下僕にしたい? 寝言は寝て言いなさいな内なるワルミ!


 内なるワルミを頭の中で簀巻きにしながら身体や周りを眺めて現状を整理する。ややふっくらぷにぷにとした白い腕、視界の隅には見事な縦ロールをキメたやや深い紺色の美しい長髪が優雅に靡く。この感じ……間違いなくワルミだ。カレンダーを見れば、フジヤマ冒険者学園入学式の1週間前……ラブたんの主人公はチュートリアル後入学式から始まるので、この時系列はゲーム知識が及ばない部分となる。


 しかし入学式前という時期から始まるのは都合が良い。何故ならワルミの主人公達に対する悪事も入学式直後に始まるからだ。この時点でワルミの悪事をしっかり封じて数々のトラブルを起こさないようにしていけば、ワルミは悪役令嬢にならず主人公達共々平和な学園生活を送れる……はずだ。もちろんワルミが介在しないトラブルもあり、それらは別途彼らに頑張っていただく必要はあるが。

 だが問題は入学式前の時点で起こっていた。ワルミの記憶を遡れば……なんと高等部編入にあたり親のコネで不正を働いていたのだ。高等部は約40人のクラスがA~Fまでの6つ、成績と貴族制度によって分けられる……が、ワルミはD~Eクラス程度の実力しか無いにも関わらず親によってBクラスに入る事になってしまった。


 ……ワルミが何故強い力に執着し、主人公達に嫉妬して邪魔をし続けてきたのか……ワルミの記憶を見て、ラブたんでの言動を鑑みて……今なら分かる気がする。分不相応のクラスに入れられて、否が応でも実力の差を見せつけられて、それでも親は不正を重ねて無理やり上位クラスに縛り付け、砕けそうなプライドはさらに下のクラスを虐める事でしか繋ぎ止められず、なのに一番下のクラスであるはずの彼らですら才能と笑顔に溢れていて……だから禁忌の力に手を染めてまで強くなりたかった。あなたが邪神になって、主人公に倒される直前のあのセリフ……


『チカラヲ………モット、チカ…ラ……ヲ………』


 あれは、そういう意味でもあったんだね。


 ………泣かないで、ワルミ。今ならまだ間に合う。私があなたを救ってみせる。でもワルミが中等部時代ロクに鍛えてこなかったのが一番悪いよ。そこは反省してね。



――― さあ、運命バッドエンドを捻じ曲げてやろう。

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