第4話 チュートリアル:転生
「ぴよぴよよ! さてさて、ちゃんと分かりましたか~?」
女神様のチュートリアルは………とんでもないものだった。予想通り無駄話も多かったので要約すると、私と少年は……死んだそうだ。蘇らせる事は不可能とのこと。
少年は11月1日午後1時11分11秒、『ラブたんRE』を購入して店から出た直後に頭上から看板が落下してきて直撃。頭部が粉々になったそうだ。なんともご愁傷様だ。しかも事前知識無しでゲームを始める前に死んでしまったと言うのだから……一ゲーマーとしては彼やその家族が不憫でならない。
一方私は2月2日午前2時22分2秒、長時間の『ラブたんRE』プレイによる慢性的な疲労と急激な興奮による血流変動によって脳が機能不全に陥り死亡。まあ、そうだろうなあ。アレは確かに死んだと思った。マジで死んでた。んひ~~~。
そして女神様が言うにはここからがミソのようで、『年数以外の月日がゾロ目の時にラブたんに関係する事故・事件によって頭部が損傷して死亡する』というバカみたいな限定条件で死んだ者を抽選し、ラブたんの設定を模して創られた並行世界にネームドキャラとして転生させるとのこと。なにそれ超楽しそう。
ゲーム的要素は多分に含まれていてストーリーも原作と同じものを辿るが、あくまでも現実の世界であり情勢次第ではストーリーそのものが大きく変化してしまう…その辺りをしっかりと考えておくように……と、なるほど。どんなキャラになろうとも悪人プレイはやめておこう。絶対ロクな終わり方にならない。もし悪役キャラになってしまったとしても、悪事さえしなければ何とか生き残れるかもしれない。少年も良識はあるようで、悪い事はしたくない……と。いい子だね。
ちなみに原作のメインストーリーが終わった後も生きている限り続くので頑張ってね……と。まあ現実世界だからね。頑張ろう。
あとは……転生者には右手の甲に星型の模様を付ける、とのこと。どのキャラに転生するかはナイショだからその目印にって。んもうイジワル~。
しかし、そうすると一つ懸念がある。……私の最期……そう、あの時の。私の幻覚だったのかもしれない。だとしても……だとしても。
『明都院 割美を救う』という夢。
もし彼女を救える道があったとして、セーブもロードもない世界で果たして上手くいくのだろうか。その時、歪んだストーリーはどうなってしまうのか。少年は……女神様はその事を容認してくれるだろうか。たまらず二人に尋ねる。私は救えぬ者を救う為に未来を歪めようとしている、と……。
「ボクはこの世界で誰がどうなってしまうのか何も分かりません。だけど………誰かを救いたいのなら、ボクはそれを助けたいです」
「ぴよぴよ、ハッピーな心掛けですね」
二人は……ふにゃりと微笑んだ。
………ただ二言、「ありがとう」としか声が出なかった。
………ただ二言、「ごめんなさい」としか言えなかった。
女神様は、そんな私を慈しむように眺めながら……静かに呟いた。
「………だとしても、ですよ」
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