第3話 ちゅ~トリアル女神だッッッ
「ぴよぴよ~ ぴよぴよ~」
……どこからか声がする。幼い女の子の……可愛らしく弾む声。何故だろう。初めて聞くはずなのに……どこか懐かしい、不思議な声。
「ぴよぴよ~ ぴよぴよ~」
声が近付いてくる。視界は未だ暗いまま。これは……目を閉じているのか。全身がやけに重い……瞼も重い。もう少し…もう少しだけ休ませてほしい。
「ぴよぴよ~ ぴよぴよぴぴぴ~~~ちゅっ!」
声の主が私の頬を優しくつついた。啄むような……啄む……え? さっきのもしかして唇? ウソでしょ? チュー? 私今ほっぺにチューされたの? マジで!?
「WTF(※1)!?!?!?」
「あっ! 起きたですね~ こにちは~~~」
跳び起きた私の目の前にいたのは……声のイメージと合致するような小柄な幼女。身長100cmほど、真っ白で時折虹色に光を弾く滑らかで美しいぱっつんロングストレートの御髪、青空のように澄んだ瞳、それはもうとんでもなく白くてもちもちとしたミルクソフトのような肌、ゆったりとしたクリーム色のワンピースにサンダル、そして小柄な身体には不相応に大きい、頭上に燦然と輝く天輪と背中に携えた純白のハトの翼……ああ、間違いない。見覚えのある女神様だ。
……いや、語弊無く言わねばなるまい。彼女は『ラブたんRE』にて追加されたネームドキャラ、『天運の女神』こと『
「え~っとぉ……お話しする前にですね もうちょっとお待ちいただけるのがよろしいのですよ~」
女神様が視線を横にずらす。私もその方向を見てみると……一人の少年が横になり眠っていた。高校…いや、中学生くらいか。Tシャツにジャージという完全室内オフな私と違い、外出中のような服を着ている……よく見ても知り合いでは無い。この子は一体誰だろう?
「ではこの子も起こしますので~」
起こす……起こす? まさか……
「ぴよぴよのぴよよよよ~~~………ちゅ~~~~~!!」
ウワーッ!! ほっぺじゃなくてダイレクトに唇にいった!! 男子に! 思春期の男子になんて事を……! は、初めてだったかもしれないのよ!? 女神様のえっちー!!
「………んぐッふ……ほ?」
「あ~! 起きましたですね~ こにちは~~~」
「………??? こにちは~~~」
どうやら少年はキスをされたと分かっていないようだ。のんびりとした挨拶をされのんびりと返している。……真実は胸の内にしまっておこう。強く生きろ、少年。
「うむうむ、二人とも起きましたので~~~」
女神様は空中に浮かぶ大きなゲームウィンドウの前までぴょこぴょこと歩き……
「それでは! ちゅ~~~トリアルを始めます! ちゅ~だけに! ぴよっ!!」
両手でそれぞれ小さな丸を作って自らの頭にポンと置き、ドヤリとポーズを取る。ああ、この女神らしからぬフレンドリーでお茶目な言い回し……ふにゃふにゃと緩くて愛らしい笑顔……やっぱり私が知ってる『チュートリアル女神』そのものだ。ありえないはずなのに……彼女はこれが現実であるかのように思わせてくる。でも言わせてほしい。
「……女神様、確かにちゅ~はネズミですがぴよはヒヨコです……」
(※1)WTF
What The F*ck。
主に英語圏の海外(アメリカなど)で使われるスラング。
「なんだって!?」という意味合いがあるが、上品な言葉ではないので
親しい友人などの前以外では使わないようにしよう。お下品ですわよ。
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