第31話 一流という名の深淵
「あとは俺がやる。お前は後ろで見ていろ。」
そんな過去を知ってか知らずか噛みついてくる1年の
それだけの力を持っているのなら俺の言うことを聞いていればいいものを。たった2歳しか年が違わないというのに、若さゆえの革命精神というものに悩まされるとは思わなかった。内輪もめで負けたとあっては保護者や先生方に面目が立たない。俺にはこのチームを鍛え上げてきた者としての責任があるのだから。人間としてもプレイヤーとしても1流である必要がある。
さて、若干戦力が減ったとはいえまだ戦いようはある。警戒すべき対象は
・ ・ ・ ・ ・
こういう人間の面倒なところは、決して害ではないことだ。大多数の人間を幸福にし、多くの者から賞賛を受ける。故に、多少の犠牲であればためらいなく払う。そして、自分の信念に基づかない犠牲が積み重なってきた頃に、その犠牲と向き合うのが怖くなる。あれは正しい行いだったのだと思考を止める。結果、停滞する。
先の
勝つのは、私たちだ。
・ ・ ・ ・ ・
センターサークルへと入った
「……何のつもりだ?」
正面の
「見たまんまだよ。真っ向勝負の申し込みさ。」
主力を前面に押し出して相対するというのだからそれはそうだろう。
「仲間大好きな理想家が本性を現したか。」
「君からはそう見えてしまうのも無理はないだろうね。」
「なに?」
「愚か者が背負いすぎた荷を投げ出した。そう思ってしまったんだろう?」
「……何も違いはないだろう。」
「あぁ、何も違わないよ。でも、それはもっと過去の話だ。今は違う。」
「……で?それがこの勝負に何か関係があるのか?言葉でオシャレを楽しむのは外で存分にやるといい。」
腹を探るつもりが
「周囲の人間から服を着せてもらっていることにすら気づけない君には、自分の服で着飾る誇らしさが分からないだろうね。」
その返した
「一流を目指した先で周りの人間が弱者に見えるのならば、君は永遠に二流止まりだよ。世界のどこにでもいる、一流という名の深淵に飲み込まれたただの化け物さ。」
「口ばかりで一流を目指したことも無いやつがあまり調子に乗るなよ。」
「まったくもってその通りだ!かたや口ばかりの理想家、かたや一流気取った二流。お互い一流に足りなかった者同士、どんぐりの背比べといこうじゃないか!どちらがより大きな木となれるか、勝負といこう。」
己の勝利を疑う様子の無い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます