第28話 今に見てろよ
「
この試合3度目のパスが俺のもとへきた。1度目は玉砕。2度目は少しでも立ち塞がる壁の枚数を減らすために
今の俺らがこいつらに勝つ方法は1つだ。
(ロングシュートこそ花形なんだよ)
俺が全ての壁をぶち破る。そのためには、より威力が高く、それでいて研ぎ澄まされていて、もっと相手がしんどそうなシュートを……何かが違う。……けど、やるっきゃない。
打ったら止められてその後は……。雑念とともに放たれたシュートは、かつてないほどに弱々しかった。もはや、普通に蹴ったほうが威力が出るのではないかと思うほどにへにょへにょと飛んだ。そのボールを見て、他の何でもなく自分に苛立ちを覚えた。
・・・
「なんだこのへなちょこシュートは。」
予想を遥かに超えた弱さのシュートに
「舐めているのか?」
もっと完璧な形が整うまで使わない予定だったが、我慢ならん。
「カウンター!!」
龍のように巻き起こった竜巻はあっという間に十字架を引き裂き、ゴールへと突き刺さった。
0-1
敵陣をなぎ倒すパワープレイからの得点で会場が沸き立つ。その一方で、
「1点取ったぐらいで調子に乗るなよ。」
その言葉を聞いた
「たかが1点だ。なにも騒ぐことはない。」
その1点すら決めることができていない人間たちの劣等感に、その言葉が突き刺さった。
「お前は人のことよりも自分のことを気にしたほうがいいんじゃないか?無能力者ごときに手こずっていては話にならんぞ。」
「っ……!!」
「まぁ、せいぜい頑張るんだな。もっとも、お前がいなくても勝てそうだが。」
「……今に見てろ。」
もはや相手のことなど眼中にないかのように争う2人を見て、GKの
「仲良くしてくれよ~。」
・・・
さっきから自分が抜かれるたびに
「よう、調子はどうだ。」
そう考えていたら、
「嫌味かよ。」
「苦しそうだな、とは思ってる。」
「ふん!今に見てろよ!!あんなやつあっという間にぶち抜いてやるからな!!」
「あぁ、待ってるよ。」
先程までの脳天気な様子から翻って、真剣な表情になった真が言う。
「ゴール前で待ってる。」
何かはわからないが、負の感情が湧き上がってくる。教えることもできてないくせにとか、俺はなんでこんなやつに敗北感を感じるんだとか。出会ったときからずっと憎たらしい。
でも、それと同じぐらい尊敬してる。こいつが話す言葉の意味を芯まで理解できないことが悔しいぐらいには、こいつの力を認めてる。心の底からこいつに勝ちたいと思うほどに焦がれてる。そのために、あいつに勝つために……。
(お前の脅威はどうやったら俺の脅威を超えられると思う?)
ふと、真の言葉が頭をよぎった。なにか、なにか掴める気がする。無数の記憶が1つに結びつきそうな、そんな衝動が……。天津に勝つためには……真が伝えたかったことは……唯一あの言葉だけ理解できたのは……。
あと一つ、あと一つ何か足りない。ゴール前に待つ真を意識するたびにちらつく何かが。俺を覚醒へと導く、何かが。
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