第17話 2人の一匹狼
試合まで残り1日。
「体の調子が万全であることを確認してからくること」
その張り紙を見て、
練習場に着くと、昨日まで練習に来ていなかったらしいメンバーの一人、
「そんでお前らの練習場に来てみたら全然人数が足りてなかったからよぉ。仕方なく練習に協力してやってんだわ。」
予選での激闘でハイスタンダードな選手へと成長した
「どうした!!そんなもんか!!
「してねぇよ!!」
「ならさっさと俺程度超えやがれ!!
「今頑張ってるところ!!」
「ならぶっ倒れるまで頑張らせてやるよ!!もう一本だ!!」
死に物狂いで鍛錬を積む3人に触発されるようにチームの熱も上がってきた。今日限りとは言わず、この先も一緒に練習したいものだ。
あと戻ってきていないのはチームの両翼を担う2チビ、
・・・
話は
ゲームは最高だ。わざわざ特訓設備を自作する必要もないし、創意工夫次第でどんな敵にも勝つことができる。与えられた条件の中で試行錯誤していく様は、失敗に対して敏感な現実社会を生きるよりもよっぽど生きている感じがする。幸い素質も十分にあるみたいだし、プロゲーマーでも目指してみようかな。
・・・
同日
分からないことに腹が立つ。鍛え上げてきた速さが一切通用しなかったことも、目覚めてからテレビで見た
・・・
試合まで残り2日
今日も今日とて、
・・・
同日
今日も今日とて
坂道を駆け上がるたびにカラカラと鳴る
そんなもんなのかよ。まだ強くなれるのに、諦められるのかよ。敵うはずがないからって諦められるのかよ。違うだろ。俺もお前も、そんな賢い人間じゃないだろ。だから、さっさとそこから出て来いよ。
・・・
そして、時は現在に至る。
カラカラ、カラカラ。森中に張り巡らせた自作の障害物たちが、スピード馬鹿のダッシュによって音を立てる。騒音というにはあまりに小さな音だった。でも、
「うるっっさい!!!」
気づけば僕は、外に飛び出していた。いつも通り、何の考えも無くただひたすらに山を駆け上がる馬鹿に対して怒りをぶつけていた。
「やっと出てきたか。」
出てくることは分かってましたと言わんばかりの態度により一層腹が立つ。
「もっと静かにやれよ!無駄に音鳴らしてばっかで耳障りなんだよ!!」
「うるさいなぁ。これが俺のやり方なんだよ。」
「ボロボロに負けたやり方にこだわってるとか、滑稽だね。」
「負けるのにビビッて逃げたやつには言われたくないね。」
「ビビってなんかない。飽きただけ。」
「あっそ。」
いつも通り互いの痛いところを突き合うようなやり取りが交わされる。例えそれが真実だったとしても、決して口では認めない。理屈とかではなく、プライドの話だった。双方ともに、相手がその姿勢を崩さないことは分かっていた。けれど、自分の正しさを証明するために、相手を負かしたかった。その結果2人が辿り着いた決着のつけ方は、シンプルなものだった。
「構えろ。」
ボールを構えた
戦いの予感に森が静まり返るのすら待たず、勝負は始まった。爆発的な推進力をもって走り出した
「もう一回!!」
当然、敗者側がその結果に納得するはずもない。いつもはシーソーゲームのように勝ち負けを繰り返し、最後は互いに力尽きて終わる。そして、因縁は明日に持ち越され、腐れ縁が続いていくという関係だった。だが、今日は違った。何度繰り返そうとも、
ついには、
「俺の勝ちだな。」
ぐうの音も出ない真実に、脳が反射的に反発した。
「
何の反論にもなっていない負け惜しみだった。反論になっていないどころか、相手に大いに隙を与えるようなみじめな言葉だった。
「そうだな。」
それ故に、
「満足したか?」
「は?」
「俺が
「そんなの…。」
ぐつぐつと屈辱が湧いてくる。こいつを打ち負かせたら、
「満足するわけないだろうが。」
「でも、飽きたんだろう?」
「飽きたら飢えるに決まってるでしょ。頭使いなよ。」
「そっちこそ賢ぶってんじゃねぇよ。みっともないよだれが透けて見えるぞ。」
「それをみっともないって言う時点で程度が知れてるね。」
「なんだぁ?」
しょうもない舌戦を終えて、少し腹を割った話に移行する。嫌だけど。できるならしたくないけど。
「で、実際どうやって勝つのさ。」
「分からん。けど、やっときたいことはある。」
「それはなに?」
「それは…」
と、
「
と、
「あれだ。」
探していたものを見つけたかのような表情で、
そう疑問に思っていると、ボールを持ったまま
「
常日頃から
《まこと》は、また技を使われると思ったのか、臨戦態勢を取っている。ただ、その警戒は杞憂に終わった。
「俺に、サッカーを教えてほしい。」
「へ?」
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