第8話 お前を否定する
2年前
当時高校一年生だった二人が出会った。攻守ともにそつなくこなす
そんな2人の物語は、強者に抗うことから始まり、天才に敗れることで終わりを迎えた。これは、凡人に憧れた凡人が再び前を向く物語。
・・・
なにはともあれ、そんな人間たちが過剰に反応するのは、己より格下の人間。この場では
理解はできるが、こいつらとは違うという感情が苛立ちを募らせる。ここにいる時点で何も違くはないのに。感情だけで大した筋書きもない稚拙な行動。
(合理的にいこうぜ)
自分が発した言葉が煩わしく脳内をよぎる。それを振り払うように単騎で突っ込んでくる
けたたましい警報音と共に、黄色と黒の警戒色に囲まれた不揃いのフェンスと有刺鉄線が
「二度もやられてたまるかよ。」
そう真に吐き捨てる。技を食らい地面に突っ伏した当の
なのに、なんで。合理的じゃない。
(奥底の感情を無視して、合理もくそないだろう)
うるせぇ。前に
先ほどの
再びこちら側に戻ってきたボールは、中央の
・・・
1年生の夏、厳しい戦いが続いたが、俺たちは順当に予選を勝ち進んでいた。その中で俺は、チームの主軸として攻防共に活躍できるようになれた。しかし、そんな順風満帆な勝ち上がりは唐突に終わりを告げる。
準々決勝にあたる試合で、こちらの攻めも守りも何もかも通じない相手と当たった。圧倒的とまではいかなくともハッキリと実力差がある相手に、全員が果敢に立ち向かった。それ故に、後半開始早々、疲労によるアクシデントで怪我人が出た。そして、
最初は落胆した。よりによってお前か、と。だが、天高く蹴り上げられたボールから放たれたアギトが全てを薙ぎ払った。相手のディフェンスもキーパーも、俺の落胆も。残り時間の問題でその試合は負けで終わった。だが、試合が終わるまでの10分間で
見下していた人間が急に成長し気まずい気持ちもあったが、それ以上に、努力の報われる姿に希望を感じていた。来年は勝てる。その時は、そう思っていた。
・・・
上空に飛び上がった
倒壊寸前の廃工場を背後に宿し、迫りくるアギトを迎え撃つ。足元に生成した武骨なレバーが苦しそうに軋むのを無視し強引に踏み倒す。大口を開けたゲートから放たれた巨大な廃棄建材が次々とアギトに襲い掛かる。不要だと捨てられた瓦礫どもが無限に押し寄せてくるその様はまさに、
完全に勢いを殺されたシュートは、ころころとキーパーまで転がっていった。悔しそうにこちらを睨む
「俺程度に止められる奴が、一丁前に睨んでんじゃねぇよ」
これで諦めてくれていれば、それで良かったのに。その諦めない意思を妬みながらも、諦めないでくれたことにどこかホッとした。何ホッとしてんだ。ここで終わらせる。
(その程度で打ち砕けるはずがない)
自身の行いの拙さに余計な思考がよぎる。……チームがあれば、
だが、俺があの守りを突破できるのか?
不可能だ。だから、
(それが何になる)
(逃げるな)
(お前は何がしたいんだ)
(一緒にサッカーしませんか!)
ふと目に入った
それが…できれば…?
…くそが。
本当に、うるせぇんだよ。
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