エピローグ
強いて言うならば
スパイクを買い替えた翌日も
明らかに様子のおかしい暴発パスを繰り返した後、苦しそうな様子で
技が出るようになれば
それは
お母さんが洗濯物を干しているときに、服の胸部付近にチップのような塊を発見した。
もう俺には必要ないから、と言う
ハッと我に返った後はいつも通りの様子だったが、ほんの一瞬とはいえとても人間ができるとは思えないほど無機質な目をしていたので呆気に取られてしまった。
気を取り直してそのチップを取り出してみると、その瞬間チップからけたたましい音が鳴り始めた。
止め方も分からなかったので音を鳴らしたまま解析を始めた。
アクセスは特にセキュリティもなく簡単なもので、サイレンのような音もすぐに止めることができた。
だが、
心拍などの身体機能全般はもちろん、トレーニングのスコアや寝食の記録まで記載されていた。
こちらに来た日からの情報が一切計測されていないのはやはり異世界に来たからということなのだろうか。
施設で生活していたサッカー選手だとは言っていたが、まさかこれほどまでに厳重な管理がなされていたとは。
しかも、このチップに入っていたアーカイブが正しいのであれば、
ときおり記載されている補足事項の一つにあった、自傷行為を防止するために個室には布団だけを配置し常に監視すること、という項目には戦慄した。
10年間にわたる一切のプライベートを排したサッカー人生。
彼は一体何なのだろうか。
影が無かったりした時点でお化けの可能性は考慮に入れていた。
だが、この記録から、地獄から運よく逃げ出すことができた異世界人という説が濃厚になってくる。
最初に
どこか現実味のない存在だと感じていたが、この過去を経て今ここで生きていると分かると生々しい現実と対極の様相の
明日はついに全国大会のクラブチーム枠を賭けたセレクション、ファイナルセレクションが始まる。
なぜかは分からないがクラブチームは部活生と比べ弱い傾向にあるため、我々の実力であれば順当にいけば負けることはないだろう。
友との道も、学業の道も捨てて得た今を終わらせるわけにはいかない。
確実に勝ちに行く。
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