第3話 金獄と最高の未来への予感
常人とは思えないほどのプレッシャーを放ちながら壁に近づいていった
ここで終わりか。微かに期待した番狂わせを、自ら止めてしまった無念がこみ上げてくる。そんな後悔を消し去るように、パリィンという音が鳴り響いた。本来であれば破れるはずのない黄金の繭を破り、
より気迫を増した
もはや残すはキーパーの
足が振り上げられる。異変を察知したツタがもう片方の足に絡みつく。引きずり落とされるその勢いすらも利用し、宙を舞うボールに鋭くかかとが落とされる。空を切る音と共に、ボールはポストすれすれに突進していく。
入れ
痛みが願いの成就に繋がるとでも言わんばかりに拳を握り、ボールの行く末を見守る。ゴール前に立つ
声が出なかった。固まってしまった体は、横たわる
・・・
決められなかった。確実に、今までの人生史上最高のパフォーマンスを発揮できていた。それでも足りなかった。悔しかった。地に足がつく瞬間までは、フィールド上の全てに感動していた。ただ楽しかった。だからこそ、ここで決めきれなかったことが、人生を賭けた博打を成功させることができなかったことが悔やまれる。
体力だけでなく、精神的な打撃も相まって、体を起こすことがとても憂鬱だった。だが、意を決して、現実に向かい合うべく体を起こす。顔を上げると、俺のシュートを止めた
「これが、お前の全力か」
沈黙を破るように
「そうだ」
早くなる鼓動を抑え、問に答える。そうか、と俺の答えに関心がなさそうに
「
「ああ。」
先ほどまで強張っていた
「
ほろほろと曖昧な返事をしながら現実を噛みしめていく。認められた。
「よろしく!」
差し出された手を力強く握り返した。
「
後ろから駆け寄ってくる声に振り返ると、満面の笑みで走ってくる後ろに髪をなびかせた男がいた。その男は近づくや否や、両手で俺の手を包み込んだ。
「僕は
「ったく、困ってんだろぉ。程々にしとけよ、
そうやって
「
拳を差し出されたのでそれに応じるように拳を合わせておく。
「おい!」
少し離れたところにいるチクチク頭のチビがボールを踏みつけながら呼びかけてきた。
「止めてみろ!」
どうしたのだろうと思う間もなく仕掛けてくる。当然、炎に包まれながら猛進してくる彼を止められるはずもなく吹き飛ばされる。ふん!、と勝ったのにも関わらずどこか不満げなチビを不思議そうに仰ぎ見る。
立ち上がると、先ほどチビが呼びかけてきた方向から、
「行くよ~」
そう言うと、ボールと自身を大小様々に分裂させながら舞うように仕掛けてくる。分身したもの全てが風をまとっており、触ることができない。再びどうしようもなく抜かれてしまった後に、各々がまとっていた風が解放され、俺の体を吹き飛ばす。うんうん、と嬉しそうに頷くふわふわ野郎を仰ぎ睨む。
「二人がごめんね。大丈夫?」
そう俺を心配してくれたのは、白髪の、地面からツタを生やす男だった。
「僕の名前は
「
「
自分で名前ぐらい言える!、と言わんばかりに名を名乗るチビ二人に
「
名前だけ言うと、何も言わずこちらを睨んでくる。見たこともない技を捌くのは不可能だと判断して、技を出させる間もなく抜き去ったのが原因だろう。最初は多少の軋轢が生じるのもしょうがないか、と考えていると、急に影に包まれた。振り返ると、夕日を背負うように筋骨隆々の男が立っていた。
「
野太い声でそう言った
「彼は
そう声をかけてきたのは
「皆に紹介すると言った私自身が君を侮っていた。申し訳ない。」
そんなこと気にしなくていいのに。謝罪を終え晴れやかな気分になったのか、
「ようこそ。私たちのチーム、FC vanguardへ。」
差し出された手を握り返す。この日から、俺の異世界サッカーライフが始まった。
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