第7話 思わぬ成り行きで新しい恋が始まる

 ジュリアンと別れた後、心の痛みがずっと続く。立ち直るためには新しい恋が始めれば良いことはわかっている。でも恋愛って「始める」ものなのだろうか?私にとっては「始まる」ものという表現の方がしっくりくる。でも、自分で望まないと始まらないだろうこともわかっている。そういう目で周りの男の子たちを見てしまう自分がいる。


 けれど新しい恋愛は思わぬ方向からのひと突きで始まった。留学から帰ってきた後に新しく参加するようになったテニスのコミュニティで同じ大学の一年生の女の子と意気投合して仲良くなった。どきどきするくらい美人で、めちゃ積極的な女の子。

 毎回帰りの電車で話し込むようになり、お茶に行くようになり、二人でご飯に行くようになり、プールも一緒に行ったし、一泊の小旅行も2回ほど行った。

 そして告白された。「ユキ先輩のこと好きになっちゃいました」と。え?ありがとう。私も好きだよ、はるかちゃんのこと、と返すと、「先輩の言っている好きというのは多分違います。私の言ってる好きはというのは、ユキ先輩に恋してるってことです」、と強い言葉。「恋」なんて強い言葉、現実の会話で発せられたのを聞くのは初めてだったかもしれない。


 え? と、すぐにはどう返していいのかわからなくなって言葉を探していると、彼女は「女同士ってだめですか?最初から先輩のことずっと好きだったんです。片思いでもいいって思っていたけど、でもどうしても言いたくて・・・やっぱ女から告白されるのってきもいですか?」と目を潤ませる。

 あ、そんなことないよ。でもはるかちゃんと恋愛とかそういうの実感なくて・・・というと、「いいんです。私、勝手に思いをぶつけただけなので。でもこれからもこうして一緒に食事したりしてください」と。


 言葉は控えめでいじらしいのだけれど、波動はかなり強引だ。私が好きと言ってるんだからもちろん彼女になってくれますよねという勢いだ。結局付き合うことになった。きっと私もはるかちゃんのこと、気になっていたのだと思う。そして彼女の強い押しに流されてという部分もあったと思う。何より美人すぎて、大きな目で見つめられると何でも許してしまいそうになる。


 付き合うことになったと言っても一緒にご飯に行ったり買い物に行ったりと、しばらくは今まで通りだった。今までと違うことがあるとすれば、ほぼ毎回、私の部屋に来るようになったことだ。告白されて一ヶ月くらい経った12月の末、いつものようにお出かけの帰り、私の部屋に来たはるかちゃんが、「ゆきさん、やっぱ私、彼女って感じじゃないですよね」というなり、泣き出した。

 どうしたの?はるかちゃん。と彼女の肩に手を伸ばすと、いきなり私の背中に両腕を回してきて、涙顔のまま私の唇に、自分の唇をつけてきた。紛れもなくキスだった。彼女の方から舌を入れてきて、かなり強引なキスだった。そしてそのままソファに押し倒された。

 ちょっとまって、はるかちゃん、と落ち着かせようとしたけれど、彼女の唇は、耳、首筋とキスをしながら下の方に降りて行こうとした。彼女の手は私の着ているセーターの中に入ってきて背中に回されて、下着のホックを探している。私とセックスしようとしてるのは明らかだった。私の意思を確かめようともせず。年下の一年生の女の子に完全に翻弄されている状況だ。


 シャワーを浴びながら抱き合い、ベッドで抱き合った。はるかはいろいろと強引だった。押さえつけるように私に覆い被さって私の体を貪るようにキスをしたり触ったりしてきた。彼女の豊かな乳房の先が私の体のいろいろなところを刺激した。おもわず声が出てしまう。彼女も私を攻めながら喘ぎ声を出す。我を忘れて興奮してしまった。たくさん濡れてしまった。

 私もはるかのそこに手を伸ばしてみた。私と同じくらいに潤っていた。彼女が私のそれを指でそうするので、わたしも彼女のそれを指でそうしてみた。はるかちゃんの指加減は絶妙で、意に反して程なくしていってしまった。いってしまったのは私だけ。私の指技では彼女をいかせられるはずはない。


 明け方まで抱き合っていた。男の子とのセックスと違っていつ終わりにするきっかけが掴めない。はるかちゃんに興奮の波が押し寄せると、私を貪り始める。私も興奮する。そんな感じだ。「ゆきさん、好きです」と私を抱きながら何度も言う。私も彼女が愛おしくなってきていることに気付いた。まだ恋という感じじゃないかもしれない。


 女同士だと一緒にお出かけしているだけでは友達関係なのか恋人関係かどうかいまいち確信できないけど、こうして激しくセックスしてしまったのだから恋人関係ではないという言い訳はできない。はるかちゃんと紛れもなく恋人関係になってしまった。男の子と恋人関係になりたいと思っていたのに、また女同士じゃないか。高校生の頃に戻ってしまうようだ。


 彼氏が欲しいと思っていたのに、こうしてできたのは彼女だった。

 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る