第25話 二次会
結婚式は教会のチャペルで身内とごく親しい人のみで行われた。従姉妹のスーちゃんはいつものガサツさを上手く隠してお姫様のようだ。新郎がスーちゃんの素をちゃんと知っていれば良いのだが……と少し心配になるほど綺麗な花嫁姿だった。
一旦家に帰ってから二次会の場所に向かう。
あゆむさんの事が気になって、会場のイタリアンレストランに入ってからキョロキョロと挙動不審な俺を見て、梅は動きがうるさいと腕をつねった。
主役の席に座っているスーちゃんがこちらを指さしている。指に合わせて振り向いた女の人がこちらに向かって来た。
水川あゆむさんだった。今晩泊めて貰うお礼を言うために俺たちのテーブルにやって来た。丁寧に挨拶して頭を下げる。
絵の中では髪の長い少女だったが、目の前のあゆむさんはうなじが見えるくらいのショートだった。
静かな落ち着いた印象の人。涼しげな目元だが冷たい感じはしない、でも少し寂しそうに見えた。
あまりにもじっと見つめていたのだろう。桜が俺の横腹を肘でつついた。
「何よ 一目惚れ?!」
小声で聞く。
「そんなんちゃうから」
「ジロジロ見てー イヤらしいなあー」
桃がわざと大きめの声でいう。あゆむさんも不思議そうに俺を見ている。取り敢えず頭を下げた。
あゆむさんに話しかける機会がないまま、二次会は夜の11時を過ぎてからようやくお開きとなった。
そのまま三次会に向かう集団を見ながら桜は俺の肩をガシッと捕まえ、
「ワタシの弟はケダモノちゃうよな」
と顔を寄せて脅してきた。
「アホか……」
梅はそれを見ながら、
「信じてるで……信だけにー」
とサブいダジャレを飛ばして二人でギャハハと笑いながら三次会の集団の元へと走って行った。
「じゃあ 帰ろかー タクシー捕まえてきてー」
桃がそう言うとあゆむさんの背中に手を添えて大通りの方へと歩き出した。
慌てて二人を追い越しタクシーを捕まえに行った
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