第22話 御守り
あゆむさんは従姉妹の友達ということか。という事は24日の結婚式の二次会で俺はあゆむさんに会えるのだ。どんな人か気になっていたのでこの神懸った偶然に感謝した。
「御守りってスゴいっ!」
内村さんが目を見開いて叫んだ。
「御守り?」
例によってまた訳の分からないことを言い出した。
「あゆむさんに御守り渡してん。こないだ遠足行ったやろ奈良に。あの時縁結びの御守り江崎君とお揃いの買ったから」
「内村さん用に買ったんやろ、それ」
「江崎君の逢いたい人に渡せる機会があったら渡そうと思って買っといた。もし会えたら今度は江崎君と離ればなれにならん様に、ちゃんと縁が繋がる様にってその人に渡そうと思っててん」
うれしそうに話す内村さんがわからない。
「内村さん」
「ん?」
「ホンマに江崎とあゆむさんの縁が繋がっても大丈夫なん?」
内村さんは不思議そうに俺を見た。
「あゆむさん 良い人やったで?」
そう言ってから急にハッとした様に、
「石田君……ごめん。そうやんな、石田君の気持ち考えてなかった……」
とシュンとして肩を落とした。
「違うって!多分今、内村さんが想像してるのは全然全く違うからっ!!」
内村さんは本当かな……と言う様に上目遣いで俺を伺っている。
「内村さんの気持ち。内村さんは平気なん?江崎のこと好きなんやろ?」
やっとちゃんと聞けた。これだけの事を聞くのにどんだけおかしな方向に迷ったことか……
「好きやで。でもアタシは恋人になられへんし、女の子やから江崎君とずっと一緒には居てあげられへんやろ。あゆむさんが恋人になってくれたら、石田君は友達として、あゆむさんは恋人として、ずっと江崎君のそばに居てくれるやん。そしたら江崎君もう寂しくないやろ、安心やん」
ホッとした様な笑顔で語る内村さんを見て思った。
江崎は内村さんにとってやっぱりヨロズなのだ。
そばに居てあげなかったせいでミイラにしてしまった亀のヨロズ。
どんなにそばに居たくても、もうそばには居られないヨロズ。
どんなことでもしてあげたいと思っているヨロズ。
「女の子でもずっとそばに居てられる関係、友達以外にもあるで」
「なに?どんな関係?!」内村さんが目を輝かせる。最初からそのつもりだったと内村さんは言っていた。
「お姉ちゃんと弟」
弟にしようと思って連れてこられた亀のヨロズ。
内村さんの江崎に対する気持ちは、恋というより愛情だ。心配して、世話を焼いて、幸せを願う。
「やっぱりそれにもなられへんやん」
内村さんは悔しそうに俺を睨んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます