第17話 俺のために
江崎のぼんやりした顔が一気に緊張した。
「なんで……名前?」
「絵の下に貼ってたから」
江崎の前の席に座って身体ごと江崎の方を向いた。
「あの人なんやろ?」
江崎はうつむいた。
「何で会うのに勇気がいるねん 何かあったんか あの人と」
「何でそんな事聞くん……」
江崎が上目遣いで俺を見上げる。
「信ちゃん、いつもはそんなん根掘り葉掘り聞いたりせぇへんやん」
確かに。
俺は今まで江崎にも他の誰かにも、本人が自分から話したがらないことを無理矢理喋らそうとしたことは無い、多分一度も。それはその方が相手のためだと思っていたから。今もそう思う、言いたく無い事を無理に言わせるつもりはない。
ただ、何かあったのか?と聞いて相手が喋らないのと、何かあるとわかっていて何も聞かないのは違う。喋りたく無いなら喋らなくて良い、でも俺は気になっていると相手に伝える事は別に良いんじゃないか?だって実際俺は気になっている。気になって仕方がない。俺の勝手だが……
江崎が何を気にしているのか、会いたいとずっと思っているのに会う勇気が出ないのはなぜなのか。あの人は江崎にとってどういう存在なのか。
「言いたく無いんやったら言わんでも良いけど、俺は聞きたい。お前が何を悩んでんのか」
江崎を真っ直ぐ見て言った、内村さんみたいに。
江崎は下を向いた。しばらく手を組んだり外したりもぞもぞと動かしていたが顔を上げると俺を見た。
「小さい頃、信ちゃんと会うよりもっと小さい頃、喘息がひどくて入院しててん」
江崎は話し出した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます