花火大会

 当時、土地勘がなかったから、場所がどこだったか?って感じだけど、たぶん山下公園とか、その辺りで花火を見たんだと思う。

人が、大勢いた。

この花火大会は何万人もの見物客が訪れる催しだった。

はぐれないようにと、元彼がわたしの手を握った。

6年前、高校の頃付き合っていた時、こんな風に手を握っていたっけ?

2人で歩く時は、だいたい彼はズボンのポケットに手を入れていて、わたしは背の高い彼を風よけか日よけのようにして、一歩うしろを歩いていたように思う。

わたしと別れた6年の間で、彼もそれなりに誰かと交際したりして、女性の扱い方も覚えたのだな。

それは、わたしの方も同じだった。

前に付き合っていた人とは、手を繋いだり、腕を絡ませて歩いていた。

なんの違和感もなく手を繋いで歩き、この辺りで見ようかと腰をおろした。

花火が始まるまで、まだ時間はある。


「ねー、聞いてもいい?なんで俺を誘ったの?」


一緒に花火を見に行かない?

って、誘ったのは、わたし。


「東京にいるって聞いたから」

わたしはそう答えた。


「電話番号は、どうしたの?」


「あ、お母さんに教えてもらった」


「そうなんだ」


携帯もなかった時代、元彼の実家の電話番号は、なんのメモもなかったけど覚えていた。

実家に電話をかけ、出たのはお母さんだった。

高校の同級生の◯◯です。

と、ウソの名前を言い、同級会があるので連絡先を教えて下さいと言うと、電話番号と今の住所を教えてくれた。

これ、今なら犯罪行為かな。

当時は、まぁ許されたレベルかと……


「電話もらって、嬉しかった」


ボン!!

ボボボボン!!!!


花火が打ち上がった。

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