別れの理由 2

 「……もしもし……」

と言った彼の声は小さくて、こんな声だったかな?って思った。

3月に引っ越してから初めて声を聞いた。


「手紙こないからさ、電話しちゃったよ。

今日ね、大学の体育祭でさ~!

大学でそんなのあるんだ~ってびっくりじゃない?

わたし、マジで本気にハードルとかやっちゃったよ!!あははっ!

ね~?夏休みはいつ帰って来るの?

引っ越しは、結局どうなったの?」


「……ってんだよ……」


「ん?なに?」


「もう終わってんだよっ!!!!」


こんな大きい声出るんじゃん?ってくらいの声で、怒鳴られ、一方的に電話を切られた。


受話器を握りしめたまま、動けなかった。


状況が理解出来ない……


“”もう終わってる“” ってゆうのは、なにが?


わたしたちのつきあいが、終わってる、じゃないよね?


でも、それ以外に、もう終わってる、って、怒鳴られることある?



 今の時代だったら、スマホに電話するとか、ラインするとか、すぐになにかしらするだろうけど、その時のわたしは、なにもしなかった。


ただ、ただ落ち込んで、なにがいけなかっただろうと考えて、考えても、答えはみつからなくて……

そして、彼のことを忘れることに専念した。

友だちと遊んで、バイトをいっぱいして、新しい恋をした。


そんな風に過ごした6年間だったのに、元彼と再会したら、そんな空白期間なんか なかったかのような気持ちになった。


 

 とりあえず、車で横浜まで行って、駐車場停めて、花火大会の前に軽く食事しちゃおうって。


本牧ふ頭近くのオシャレなカフェで食事した。


「言い訳にしか聞こえないと思うけど、聞いてくれる?

俺、別れた時のこと、あんまりよく覚えてなくて……

俺が原因で別れたんだよね?」


「えっ?」


覚えてない?

終わってる!!って怒鳴ったことを?


「作り話みたいだけど、あの◯◯荘の俺の部屋、オバケ部屋でさ、なんてゆうか、俺取り憑かれてて、いろいろとやらかしちゃったんだけど、それ、友だちとか先輩に聞いてもらえば証言してくれると思うけど……

って、どうでもいいよな、そんな話……」


彼の話は、こうだ。

◯◯荘の6号室、引っ越した時からなんとなく違和感を感じていた。

物がなくなっていたり、移動していたり。

管理人が勝手に出入りしてるんだなと思った。

夜になると、外から騒音がする。

話し声が聞こえる。

1番奥の部屋なのに、壁を叩く音が聞こえたり。

新しい環境で疲れているのかと思った。

隣りの5号室の先輩に話をすると、前に6号室にいた人も半年くらいで引っ越したと。

オバケ部屋なのかもしれないって話になった。

管理人に話をすると、そんなことはないの一点張り。

結局、4ヶ月で◯◯荘から引っ越した。


「俺、たぶん、俺のせいで君を傷つけて、別れたんだと思ったけど、そのことを君に伝える勇気もなくて、謝ることもできなくて、ずっと、後悔してた……

地元の友だち伝いに、君が別の人と付き合っているって聞いて、もう俺の出る幕じゃないなって。

もう、迷惑をかけたくないなって思ったから。

地元には戻らないで、東京で就職したんだ。

もう、君に会うことはないんだろうと思ってたよ」



別れの理由は、オバケに取り憑かれていたから


それを、そうだったんだ!!

なんて、鵜呑みにはできないけど、突然の別れは、そうゆうことだったのかと納得することもできた。

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