第7話美香の憂鬱
美香とマサキは同じ時間のバスに乗った。たまたまだ。そして、高校最寄りのバス停で降りて、20分歩く。
2人は仲良く、昨夜のテレビ番組の話で盛り上がりながら歩いていた。
すると、歩道の端っこに黒の物体が落ちていた。
マサキは拾った。それは、財布であった。
万札が5枚と千円が数枚、そして、小銭。
「美香、いいよね?」
「交番届けなきゃ!」
「バーカ、拾ったもんのモノだよ」
と、マサキは札を抜こうとしていた。
「それって、犯罪よ」
「何の?落とした方が悪い」
「占有者離脱物横領って言うんだよ」
「詳しいねぇ。せめて、1万円だけでも」
「ダーメ」
「誰かチクらなければバレないよ」
「バレるよ」
「何で?」
「私がチクるよ!」
「……じゃ、お前、交番行け!」
美香は財布を受け取り、交番へ向かった。
『よしっ!誰も見てないわね。諭吉さん、全員頂きっ!』
美香は諭吉を引き抜こうとしていた。
「見たぞ!」
美香が振り向くと、交番へ行く道の真ん中にマサキが立っていた。
『し、しまった〜!』
「お前、そうゆうの占有者離脱物横領って言うんだよ。お前、1万円札抜こうとしてたろ?」
「ち、違う。確認していただけ!」
「いいや、今、お前の目は非常に汚い目をしている。汚物だ!お前、うちの親に学校でウンコ漏らした事、チクったろ?」
「……知らない」
「その財布はオレが交番に持って行くよ」
「ダメ!2人で持って行こうか?」
「よし、いいだろう」
2人は交番へ行き、財布を届けた。すると、交番には若いお兄さんがいて、財布を落としたと言っていた。2人が手にした財布を見ると、破顔し自分が落としたモノだとお巡りさんに話し出した。身元確認して、本人のものと判明し、無事に落とし主に財布は戻った。
美香とマサキは学校へ向かっていると、その若いお兄さんは2人を呼び止めて、
「君たち、本当にありがとう。お金はいいんだけど、カードが入ってるでしょ。失くすと大変なんだ。だから、お礼に」
と、言うと美香とマサキに1万円札を1枚ずつ渡した。
お兄さんは、ニコリとして走って行った。
残された2人は、お互いに恥ずかしい場面を見られたバツの悪さから、無言で登校した。
君たちの心は、1度煮沸消毒したほうが良い!と、言っておこうか?
いつも彼女は、間違っている 羽弦トリス @September-0919
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