第24話 脱走

ジュリアが屋敷に軟禁状態であることを

ニールが知り、結果的に原始的な方法で

窓から外に逃げて庭の塀をよじ登る作戦で

屋敷を抜けることにしました。


しかしそこは 道具屋。

女性のジュリアにも脱走しやすい道具を

ニールは揃えます。


しかし、あまりヒルマ村の襲撃を

脱走の道具の調達により

遅らせるわけにはいきません。


ニール自体がウィルの屋敷に入れなくなると もう計画は失敗になるからです。


ニールがウィルの屋敷でジュリアと

会ってから翌日、

再びニールはウィルの屋敷に訪れ

襲撃の道具の調達が少し遅れると

嘘の報告をします。


その際 ウィルはニールに


「これは摂政直々の命令なので

 これ以上の遅れはないように。

 もし遅れたらそれ相応の処罰が

 あるのでそのつもりで」


と釘を打たれました。


ニールは覚悟の上で

納期を遅らせたことでしたが

やはりウィルの言葉は怖さを感じました。


しかしその後、ジュリアにそっと

屋敷を脱走するための道具を渡しました。


ただ 堂々と脱走の道具を屋敷内に

持っていくわけにはいきません。


一度だけでは全ての脱走 道具を

屋敷に持ち運べず

次の機会で揃えることにしました。


しかし ニールが襲撃の道具の納期を

伸ばせるのも せいぜい ここまで。

つまり あと1回ウィルの屋敷に来れるのが

限界でした。


ジュリアの部屋は3階にあり

脱走できる場所も限られていました。


玄関には常に門番がいたり

屋敷の入り口にも見張りがいます。


これは父 ウィルが少し前、

ジュリアがヒルマ村に

行きたがった事を受けて

自宅の警備員を増やしたことが原因で

脱走も簡単ではなかったのです。


ましてや ジュリアは女の子で

脱走はもとより運動もそこまで

得意ではありません。 

でも ジュリアの決意は固かったのです。


そして2日後

ニールは再度ウィルの屋敷を訪れました。


ウィルに襲撃に必要な道具を

全て用意できたと報告するためです。


そしてウィルの屋敷に

襲撃に必要な道具が納品されました。


直接バロウの屋敷に納品されないのは

基本バロウの屋敷は特定の人物のみが

入れる屋敷だったからです。


言い換えればそれだけ

闇に包まれている部分もありました。


そして ニールがウィルとの話が終え

ジュリアと会います。


ニール

「お嬢さん 、

 今回でこの屋敷に来れるのは最後です。

 これを・・・」


と言って ジュリアに 縄梯子を渡しました。


ジュリア

「ありがとう。

 調べられたら ニール さんも

 危ないのに・・・」


ニール

「いえ、いいんです。

 私もヒルマの人たちが

 危険に目に遭うのはつらいですから」


ニール

「では、成功をお祈りしています」


ジュリア

「ありがとう」


そう言うとニールは屋敷を出ました。

ニールが用意した脱出道具は

先ほど渡された縄梯子に

鉤(かぎ)の手付きのロープ

そして 頑丈な革の靴とグローブでした。


脱走決行は夜。

皆が寝静まってからです。


ただヒルマ村の襲撃は明日に迫っていました


その夜、

ジュリアは深夜、日付が変わった頃

そっと自分の部屋の窓を開け

ベランダに出ると、そこから縄梯子を

ベランダの柵に縛り付け、地上に降りました


そして今度は鉤の手つきのロープを使い

外壁の外に向かって鉤の手を投げます。


すると鉤は外壁の外側のヘリに

うまく引っかかりました。

ロープを引っ張りピンと張ります。


そして何度かロープが緩まないか

強く引っ張って確かめた後

早速ジュリアはロープを登り始めます。


しかし縄梯子の時とは違い

腕の力だけで登っていくのは

ジュニアにとって大変でした 。


しかしヒルマ村のことを思うと

ジュリアの中で力がどんどん

湧いていきました。


2.5m ほどの高さの塀を登ると

今度は鉤の手を一度取り

逆側のヘリに引っ掛けて

今度は屋敷の外へ降りました。


この道具もちゃんとニールが

この屋敷の構造に合わせて

脱走道具を加工してくれていました。


ジュリアはスムーズに屋敷を

抜け出すことができました。


屋敷を無事に脱走できた ジュリア。

ヒルマ村に向かい 始めます。

鞄の中に必要最低限の食料を入れて。


ノルウェアの街外れまで来て

ここから いよいよ本格的に

ヒルマ村に向かう道という場所に

一人の男が立っていました

それは ニールでした。


ジュリア

「ニールさん!」


ニール

「ジュリアさん。

 無事 、脱出できたんですね」


ジュリア

「ニールさん、もしかして・・・」


ニール

「そうです。 私も行きます」


ジュリア

「でもご家族が・・・」


ニール

「私の摂政からの仕事は終わりました。

 是非一緒に行かせてください。

 妻や子供にはちゃんと説明しました」


ジュリア

「でも成功するかわからないし、

 もし摂政の邪魔をすると

 後でどんな目に遭うかもわからないのに」


ニール

「それはジュリアさんも同じでしょう?

 私としては 妻や子供に

 ちゃんと人間としての行動を示す

 いい機会ですよ。

 だから私も行きます。

 なに、必ずいい結果になるように

 頑張りましょう。それしかないんだから」


ジュリア

「ニールさん、ありがとう」


ジュリアは内心 1人で心細かったのです。

しかし ニールの存在 そして

言葉に励まされました。


2人は急いでヒルマ村に向かったのです。

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