第23話 告白

レムロは早速、ヒルマ村の襲撃の準備を

始めます。

レムロにとってヒルマ村を滅ぼすことは

ベルを自分のものにするために必須であり 今までの噂話はその行為を正当化するための大義名分でした。


あとは実行するだけ。


襲撃は夜間に行われることになり

衛士100名ほどが選ばれました。


村の規模も大きくないし

片道 歩いて2日かかる場所です。

あまり多くを連れて行く必要ないとの

判断でした。


襲撃するにあたり 様々な武器、道具を

調達する必要がありました。

衛士は古い武具を新調したり

日をまたぐので野営の道具も

欲しくなりました。


レムロはバロウと相談し

資金調達や道具に関しては

ウィルに必要な材料を

揃えてもらうことにしました。


ウィルは早速、自分の屋敷に戻り

ニールの道具屋で今回の夜襲に

必要な道具を注文します。


ニール はずっと複雑でした。


いつもひいきにしていたヒルマ村の人達が

本当にレムロを殺そうとしているのか。


ニールはとてもそうは思えなかったのです。 ヒルマ村からは人が交代で

ニールの道具屋に工芸品を

納入してくるけれども

どの人も皆、怪しい人間には

見えませんでした。


それでもやはり御上の指示です。

ニールは襲撃のための道具を準備しました。


注文を受けた翌日

襲撃のための道具を準備するにあたって

ニールがウィルの屋敷に向かいます。

道具がいつ、全て準備ができるかと

道具を受け渡す流れをウィルに

確認するため でした。


ニールがウィルとの話を終えると

屋敷に1人、寂しく歩いている

ジュリアの姿がありました。


ジュリアは病気が治ってから

ヒルマ村の工芸品を

ニールの道具屋で買っているので

お互い顔は知っています。


ニール

「お嬢さん」


ジュリア

「あ、ニールさん」


ジュリアの顔が少し明るくなります。


ニール

「どうされたんです?

 やけに寂しげでしたが」


ジュリア

「いや 別に・・・

 でもニールさんが何故、私の屋敷に?」


ニール

「いや 今度ヒルマ村に襲撃する際に

 必要な道具を調達する事になって

 その関係でウィルさんに

 会いに来たんですよ」


ジュリア

「何ですって!」


ジュリアは驚きました。

ウィルはヒルマ村の襲撃は

ジュリアには黙っていたからです。


ニール

「お嬢さん。どうかしましたか?」


ジュリア

「いえ、確かにレムロによって

 私は病気が治りましたし

 噂があるのは知ってるけれど・・・」


ジュリアは困惑しました。


それを見たニールも、


ニール

「いえね、私もヒルマ村の工芸品を

 取り扱ってる店でしょう。

 定期的に来るヒルマ村の人たちは

 皆、良い人なんで

 今回のことはちょっと

 信じられないんですよ。

 もちろんヒルマ村の全ての人を

 知っているわけじゃないんだが」


ニールは続けました。


ニール

「何でもヒルマ村は質素が美徳とされていて

 村人も皆、穏やかに過ごしていると

 聞くんです。

 それは実際お店に来るヒルマの人たちを

 見ると、まさに思うことなんですよ。

 同じ村に殺人鬼がいるなんて・・・」


その言葉を聞いてジュリアは

我慢できなくなり、ニール に言いました。


ジュリア

「ニールさん。

 ちょっとお話があるので私の部屋に来て」


そう言うと2人は

ジュリアの部屋に向かいました。


ジュリアの部屋に着いた2人。


ジュリアは周りに人がいないことを

確認するとニールに話しかけました。


ジュリア

「ニールさん、実は私、

 レムロに助けられたわけじゃなく

 ヒルマ村の方たちに助けられたんです」


ニール

「え ?本当ですか?」


ジュリア

「はい、ヒルマ村に不思議なベルがあって

 その力で、私は救われました。

 そのベルはあまりにも強力なので

 沢山の人に知られてしまうと

 悪用されてしまう可能性があるので

 決して他の人には話さないようにと

 ヒルマ村の方々に言われて

 私、黙っていたのです。」


ニール

「じゃ、じゃあレムロは・・・」


ジュリア

「多分、何らかでベルの存在を知って

 私をそのベルのところまで

 連れて行っただけです」


ニール

「村を襲撃するというのも・・・」


ジュリア

「ベルを奪うのが目的です。きっと」


ニールはどこか 罪悪感にかられました。

自分が噂を信じた部分があったからこそ

ヒルマ村の人たちに

申し訳なかったのでした。


ジュリア

「ニールさん、

 なんとか襲撃をやめさせられないかしら」


ニールは少し考えて


ニール

「お嬢さん、多分、止めさせることは

 無理でしょう。

 しかし遅らせることは可能だと思います

 私が納期を少し遅らせます。

 その間に何とかヒルマ村に

 襲撃のことを知らせなければ」


ジュリア

「ニールさん、それ私が行きます!」


ニール

「えっ!お嬢さんが?」


ジュリア

「街の人たちではダメです。

 みんなレムロを信じてるから。

 私しかいないんです」


ニール

「それは危険です。私が行きます」


ジュリア

「ダメです。

 ニールさんはご家族がいるでしょう?

 もしニールさんがいなくなって

 その理由が知られたらご家族が危険です」


ニールは苦しみました。


自身がヒルマ村に行きたいと思い

勢いで口にしたものの、冷静に考えると

これは御上からの注文であり

逆らったり、変に放棄をすれば

何をされるか分かりません。


ましてやヒルマ村まで片道2日はかかる。


襲撃の準備をしてる間は

ニールも他の仕事を優先する訳にもいかず

そして準備が終われば直ぐに

夜襲をするためにノルウェアを

出発することはニールも知っていました。


ニール

「・・・わかりました。

  私に何かお手伝いできることが

 あるなら手伝います」


ジュリア もニールも 万が一

襲撃の邪魔をすることがバレたら

処罰を待っていることは承知でした。


しかし 2人はヒルマ村に

襲撃があるという一報をするための

準備を始めました。




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