第21話 別れ目

そんな頃ノルウェアの街では

また新たな噂がたちます。


『レムロが、とある村の男に

 命を狙われている』


『命が狙われているから

 ある場所に身を隠している』


こんな噂がノルウェア中に

広まっていました。


ヒルマ村の存在は工芸品を通じて

知っている人間がいるので

レムロの命はヒルマ村の人間が狙っているという話にすり替わっていきました。


そんな時にノルウェアの街の摂政にあたる バロウという人間がレムロの保護を

宣言しました。

バロウは資本主義の申し子 のような人間で ノルウェアの実権を握っていました。

そして街のいたるところに

こんな張り紙が出るのです。


『救世主レムロを保護するため

 見つけたものに100万クラウン与える』


その張り紙がニールの道具屋にも

張り出されました。

そしてジュリアの屋敷の前にも。


ジュリアはヒルマ村の人間が

レムロの命を狙っているという噂を聞き

すぐにヒルマ村に向かおうとしました。


しかしいくら健康な身体になったとはいえ

ヒルマ村までノルウェアからは

丸々2日かかります。


往復で4日。

流石に気軽に出ていける距離では

ありません。


ジュリアは、父ウィルに隠れて出かけようと

しましたが、運の悪い事に準備している途中

父に見つかってしまいます。


そして問い詰められジュリアは正直に

行き先をヒルマ村と答えてしまいます。


ウィルも噂の事は勿論知っていました。

だからこそジュリアを慌てて止めました。


レムロを狙う殺人鬼がいるところには

行かせられない、と


引き止められ ジュリアは困りました。

それに、この事が原因でウィルは

ジュリアを暫く屋敷から

出られないようにしてしまいました。


一方ニールの道具屋では張り紙は良いとして

噂話は正直、困っていました。


ヒルマ村は取引先の相手であり

人間性も知っていて、とても人の命を狙う

人達じゃないのは分かっていたからです。


しかし道具屋に買いに来る客は

口を揃えてレムロの話であり

ヒルマ村の話が出ます。


ニールの道具屋でヒルマ村の特産品を

取り扱ってることを知っている、とある客は


「おたく、もうヒルマ村の仕入れ

 止めた方がいいよ。

 いつあんたも命が狙われるか

 わからないんだから」


と言ってくるのです。

ニールが複雑な気持ちになっていました。



その頃レムロはバーニーと一緒に

ハンベルト公会堂にいました。


バーニー

「おいレムロ

 こんな貼り紙が貼ってあったぞ」


バーニーはレムロにバロウが張り出した

張り紙を渡しました。


レムロ

「いよいよ来たか」


レムロは張り紙を見ると

独り言のように言いました。


バーニー

「おい、どうすんだ?」


レムロ

「早速 行こう。 バロウの屋敷に。

 バーニー、 一緒に行ってくれ。

 そうすれば100万クラウンを

 お前にやれるから」


バーニー

「よし。分かった」


2人は早速バロウの屋敷に向かいました。

そして屋敷に着くとレムロはバーニーに

「世話になった 」

と一言、言ったのです。


バーニーはこのレムロの一言が

妙に引っかかり、そしてなんだか

レムロとの距離を感じました。


2人はバロウの屋敷の待合室で

待っていました。

すると、やってきたのは街の銀行家

ウィルでした


ウィル

「おお、レムロ。久しぶりだな」


レムロ

「お久しぶりです。 お嬢さんの具合は?」


ウィル

「健康そのものだ

 ただちょっと心配があってな」


レムロ

「何です?」


ウィル

「今、ヒルマ村の男が君の命を

 狙っているという噂が絶えないのは

 知っていると思うが、

 そんなヒルマ村に何故かジュリアが

 行きたがってな。

  殺人をするような人間がいるところに

 何故、行きたがってるのかがわからん

 慌ててジュリアを屋敷に

 閉じ込めたところだ」


レムロ

「そうだったんですか。

 それは危険な行為です。

 しばらくはお屋敷に居られる方が

 お嬢様のためです」


ウィル

「うむ」


レムロ

「ところでウィル様はなぜここに?」


ウィル

「うむ、ここは知っておろうが

 この街の摂政、バロウの屋敷。

 私も街の銀行の頭取をしているので

 街の経済についてよく摂政殿と

 話をするのでな。

 それに今回、君の保護にあたって

 自分がレムロだとなりすまし

 100万クラウンを騙し取る人間がいる

 可能性を考えて、

 直接お前と会った事のある私が

 本人かどうかを確認する

 役目をしているのだ」


レムロ

「なるほど。

 実は私は命の危険が発生してから

 この隣にいる男、

 バーニーにかくまってもらいました。

 100万クラウンは彼に

 渡してあげてください」


ウィル

「そうか、よし わかった。

 バーニーとやら、ご苦労だったな」


そう言うとウィルはバーニーに

100万クラウンを渡しました。


ウィル

「よしレムロよ。

 早速バロウと会ってほしい」


レムロ

「はい、わかりました」


そう言うとレムロはウィルと一緒に

控え室を出て屋敷の奥に進んで行きました。


バーニーはレムロの後ろ姿を見て

レムロがもう自分とは違う世界に

行ってしまう気がしました。







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