第19話 噂話、再び。
そんなスラム街にシバは
足を踏み入れました。
手入れはされていない建物がほとんどで
家は最低限、人が住めるような形で
補修してありました。
家の壁が 布切れで塞がっていたり
屋根にシートがかかっていたり。
そんな街を歩いていると
一人の少年と出会いました。
少年はシバを見ても何も言いません。
ただずっとシバを見ていました。
シバは少年にレムロについて
聞いてみることにしました。
シバ
「ちょっと聞きたいんだが
レムロという人を知っていないか?」
少年
「金をくれれば教えてやる」
と言い返しました。
シバはお金を100クラウン渡しました。
少年はむしり取るようにして
お金を取りシバにこう言います。
少年
「レムロさんはいい人だよ。
こんな僕にもお金をくれるんだ」
シバ
「今、そのレムロさんはどこにいるか
知ってるかい?」
と、尋ねると
少年
「知らないよ。
おじさん、なんでレムロさんのこと
聞きたいの?」
シバ
「い、いや、私の子供が病気で
レムロさんなら治せると
聞いたもんだから」
シバは逆に聞き返されて焦りましたが
適当に嘘を言ってごまかしました。
少年
「ふうん。
レムロさんが病気を治せるのは本当だよ。
バーニーあんちゃんが言ってたから」
シバ
「バーニー? 誰だい?」
少年
「会いたければ、
いつも、そこの公会堂にいるよ」
そう言うと 少年は去っていきました。
シバは近くにあるハンベルト公会堂に
向かいます。
公会堂の中に入ると、そこに
真っ黒の革ジャンを着ている男が
一人いました。
シバは少し警戒しながら声をかけます。
シバ
「す、すみません
あなたがバーニーさん?」
バーニー は面倒くさそうにシバを見て
バーニー
「なんだおっさん」
と、言い返しました。
シバ
「ちょっとレムロさんについて
聞きたいんですが」
とシバは慎重に言いました。
バーニー
「レムロ?ここにはいないよ」
と、ぶっきらぼうに答えます。
シバ
「さっき、少年にレムロさんは
病気を治せるとバーニーさんが言ってた
と聞いて・・・
実は私の子供が病気で
レムロさんに是非・・・・」
バーニー
「ここにはいねぇって言ってんだろ!」
とイラついた感じで言い放ちます。
シバは
「いつ会えるか?」とか
「レムロはどんな人なのか」と
質問しましたが バーニーは一向に
「ここにはいない」
「知らない」
でした。
バーニー
「おっさん どこに住んでんのよ」
と思いがけない質問を
バーニーはシバにしました。
シバはヒルマ村のことを
言おうか迷いました。
嘘を言うと調べられたら
怪しまれると思い
ここからいくらか離れた村と答えました。
バーニー
「ふーん。
ノルウェアにいるんだったら条件次第で
レムロが帰ったらアンタに伝えてやっても
よかったけどな。
まあ離れてるんじゃ だめだな。」
シバはこれ以上いると
かえってまずい状況になると思い
その場を立ち去りました。
シバはノルウェアの街の宿屋に戻り
一休みすることにしました。
その夜 バーニーのもとに
レムロが現れます。
レムロ
「今日も1日 モグラで疲れるわ」
バーニー
「ヒーローは辛いね〜」
とバーニー はからかいます。
レムロはノルウェアの街にいないで
ずっとスラム街のとある場所の
地下に潜っていました。
そこは昔 ノルウェア北部が
感染症で大変だった頃に作られた
地下室でした。
そこは 感染症の研究室でした。
レムロ
「地上はいつも通りだったか?」
バーニー
「お前の噂でもちきり以外はな」
バーニー は再び
からかうように言いました。
レムロ
「うるせ〜」
バーニー
「ところで今日、
俺のところにあるおっさんが訪ねてきて
例のごとく お前のことを
聞いてきたんだが」
レムロ
「今日だけじゃないだろ」
レムロの噂が立って以来
レムロがスラム街にお金を恵むという話からたまにレムロを求めて南部の人間が
スラム街にやってくるように
なっていました。
バーニー
「今日来たおっさんは
ちょっとしつこかったな。
南部の人間じゃなかったし」
レムロ
「南部の人間じゃない?」
バーニー
「どこかの村の人間って言ってたな。
まあ、わざわざ離れたとこから
来たのなら、しつこくなって当たり前か
お前の名声も、ノルウェア以外の場所に
広がりだしたって事か。」
レムロはピンときました。
ヒルマ村の人間が自分のことを
調べに来たんだと。
そこでレムロはバーニーに
こんな話をします。
レムロ
「バーニー 明日からこんな噂を
流してほしい。
『レムロは今、悪い連中に
病を治す力があることで
命を狙われている。
よって、とある場所に避難して
街に出られない』と」
バーニー
「なんだよ また噂か?
もういいんじゃないか?
病気治して欲しい人間から
金をもらって治せば良いじゃないか」
レムロ
「アホ まだダメなんだよ。
命がかかる話に安請け合いなんか
するもんじゃないだろ。
ホイホイ治ったらありがたみもない。
それに実際、俺のことを邪魔する人間が
いるんだよ」
バーニー
「へぇ、それは誰だ」
レムロ
「さっきお前が言ったおっさんがそうだ。
おっさんは俺が病を治す能力を
狙っているんだよ」
バーニー
「おっさんは子供の病気のこと言ってたぞ」
レムロ
「それは嘘だ。
おっさんと以前、俺は会ったことが
あるんだ。
おっさんは村から来たって
言ってたんだろう?
俺は前にジュリアの病気を治す時に
とある村の人間に邪魔された。
その力をよこせと言って
襲ってきたんだ。」
レムロはこの近辺の村はヒルマ村しか
ないことも知っていました。
レムロ
「村から来た人間なら
おそらく間違いはない。
そのおっさんは以前、俺を襲ったやつだ」
レムロ
「とにかく、その村の人間に
命を狙われているから身を隠していると
話をばらまいてくれ」
レムロの話は所々、
本当の事が混じるから聞く方は厄介だし 言う方は便利でした。
レムロにとって嘘でも本当でも
自分の都合のいいように話が向かえば
良いことであったので
嘘を言うことに抵抗はありませんでした。
シバの件についてもそう。
バーニーが今日会った"おっさん"の話で
実際、シバであってもなくても
レムロにとって自分を妨害する人間がいる
という話が世間に広まれば良いことであったのです。
そうすれば世間に会わず 話だけが噂され
自分に対する評価が上がっていく。
レムロの目的は自分の言うことを
世間に信じさせること。
レムロは自分の身に起こったに対し
自分の都合にあった辻褄に合わせ
人を利用するのが上手かったのでした。
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