第18話 ノルウェアの歴史
ジュリアの屋敷には毎日
レムロに関することを聞きたがる
人が絶えませんでした。
ジュリアやウィルは対応に追われる
毎日でした。
来訪客はレムロのことを信じきっている
人間が多く、レムロの話をするたび
ジュリアは気が重かったのでした。
そんなところにシバがやってきます。
ウィルの屋敷前にシバがやってくると
ちょうどジュリアが屋敷の中に入っていく
途中でした。
そんな ジュリアにシバは声をかけました。
シバ
「ジュリアさん」
ジュリア
「シバさん」
ジュリアは
疲れた顔でしたが
シバの顔を見て明るくなりました。
そんな様子を見てシバは
シバ
「大丈夫ですか?
何か疲れた様子でしたが」
ジュリア
「大丈夫。 病気していた時と比べれば」
とにかく二人は屋敷を出て
近くの軽食店で話すことにしました。
2人は軽食店に入りテーブルに
向かい合う様に座ると飲み物を頼みました
そしてジュリアが切り出します。
ジュリア
「シバさん、ノルウェア中がレムロの噂で
もちきりで・・・」
シバ
「私もニールさんの道具屋で聞きました
相当レムロが持ち上げられている
ようですが」
ジュリア
「はい。 私が屋敷に戻った後、
実はレムロが間もなく屋敷に来て
父がレムロに病を治した経緯を聞くと
"私は様々な病気を治す場所を知っている
ただそれは 誰にも教えられない
黙っていてほしい"
と言って、その後 屋敷を出たんです」
ジュリア
「怪しかったんですけど
レムロ自身が秘密にして欲しいと
言ったので少し様子を
見ることにしたところ・・・」
シバ
「レムロを称賛する噂で街中が
もちきりになったんですね」
ジュリア
「私も村で聞いたレムロのことを
皆に言った方がいいのか
黙っとく方がいいのか
わからなくなってきて」
シバ
「多くの人がレムロを信じている中で
レムロの批判話をしても
信じてもらえないだけじゃなく
レムロを信じる人間から貴女に
被害を及ぶ可能性もある。
おまけに貴方がレムロをきっかけに
命が助けられてることを考えれば
貴方の人間性まで疑われてしまうことも
ありえる。
黙っておく方がいいと思います。」
ジュリア
「しかし 、どうすれば?」
シバ
「ジュリアさん。
あなたが病が治ったことを
屋敷以外の人間に話したりしましたか?」
ジュリア
「いいえ 。誰にも」
シバ
「じゃあ、やはりこの噂の出所は
レムロが言い出した可能性があります」
ジュリア
「どういうことですの?」
シバ
「実はニールさんの道具屋で
レムロはスラム人にお金を恵んでいる
という話を聞きました。
レムロはあなたと一緒だった時
お金は持っていましたか?」
ジュリア
「分かりませんが、
私が村から屋敷に戻った時
父が沢山、報酬をレムロに渡しました」
シバ
「多分その報酬でスラム 人を
動かしたんでしょう。
ジュリアさん、私はこれから
スラム街へ行こうと思います」
ジュリア
「えっ?それは危険です。
スラム街は地元の警察でも
干渉しない場所なんです」
シバ
「危険かもしれませんが
今のところできることは
これぐらいしかありません。
ジュリアさん、
スラム街はどこにありますか?」
ジュリアはシバを心配しましたが
確かに今ジュニアに出来ることは
スラム街をシバに教えるぐらいしか
ありませんでした。
ジュリア
「そうですか。
くれぐれもお気をつけて。
スラム街はノルウェアの北部
ハンベルト公会堂という大きな建物が
あってその周辺です。
ハンベルト公会堂は昔、時計台としても
使われていたので、大きな建物に今は
動かない時計がかかっているはずです」
シバ
「分かりました。 なに大丈夫ですよ。
レムロのことを聞くだけですから。
ジュリアさんも大変かと思いますが
お気をつけて」
そう言うと2人は軽食店は後にして
シバはハンベルト公会堂を目指し
スラム街に向かいました。
スラム街は昔、ノルウェアの
中心部だったところ。
それはまだ、このノルウェアが
でき始めた頃のこと。
それがなぜ今、スラム街になっているかは スラム街の入り口にある錆びついた看板が
物語っています。
しかしその看板に書かれている文字は
もう読めませんでした。
その昔このノルウェアが次第に
大きくなっていくにしたがい
様々な地域の人間が集まりだしました。
そしてノルウェアは更に拡大。
今のスラム街から南に街は広がりを
みせていきます。
そんなある時 ノルウェアの街で
感染症が起こります。
感染症はゆっくりと確実に広がり
特効薬もありませんでした。
その感染症の中心が今のスラム街の地域
つまり、昔のノルウェアの
中心だったところでした。
新しい南部の街は、
この街に新しく移り住んだ人が多く
ノルウェアの中心であった北部の住人は
このノルウェアを築き上げた人たちが多く
住んでいました。
そして感染症は
このノルウェアを築き上げた
北部の住民たちの間で広がったのです。
そして 北部に住む先住民と
新しく移り住んだ南部の住民とで
ノルウェアの街は2つに分断。
古いしきたりを大切にする先住民と
新しいモノをどんどん取り入れ
改革していく南部の住民。
ノルウェアはそんな状況でも
人口が増えていき、新しく移り住んだ人が
南部に住むと自然と南部の勢力が
拡大していきました。
次第に劣勢に追いやられる北部の先住民に
感染症が追い打ちをかけます。
そんなある時、
南部の人間が北部との境目に
柵を作りました。
1つは感染症が広がる北部の人間を
南部に入れないため。
そしてもう1つは南部は南部だけで
独立した区域で街の行政を行っていく
ためでした。
北部の先住民たちは反発しましたが
数にものを言わせる南部の人間は
北部の人間を徹底して排他的にしたのです。
次第に北部の街は感染症で人が亡くなったり 街を出る人間も出てきました。
実はこのノルウェア北部にいた先住民で
この時に街を出たのが、今のヒルマ村の
祖先にあたるのです。
そして北部と南部の境目
今のスラム街の入り口には
こんな看板が掲げられます。
『ここより感染症蔓延区域により
立ち入り禁止』
北部の街並みはゴーストタウン化されて
人はほとんど住まなくなりました。
そして感染症も次第に収まりました。
そしてさらに発展するノルウェアの南部。
そんなある時からノルウェア南部の人間が
ゴーストタウン化された北部の町に
住みつくようになります。
それは南部の街でトラブルを起こしたり
バーニーやレムロのように
親が離婚したり亡くなったりする子供が
南部での場所を失い、そのまま北部の街に
行ったりして住み着いたのが理由でした。
ノルウェアの街は大きくなりました。
様々な人種、考えの人間が、
このノルウェアに集まりました。
そして繁栄していきました。
しかしこの街を造ってきた、
資本主義や利益主義が結果
トラブルやその利益戦争によっての
敗者を生みました。
人が住みつくようになってから
次第に柵は壊れていき
土地として南部と北部の境目は
無くなりましたが
人の差別は生まれた
皮肉で悲しい歴史でした。
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