第17話 レムロの噂話

一方ジュリアと一緒にノルウェアに来た

シバはレムロの事を調べていました。


酒場、料理屋、道具屋、宿屋。

いろんな店に行って調べましたが

あまりいい情報はつかめませんでした。


酒場と宿屋で覆面の男が来たことは

確認できましたが、とりわけ

他の情報はなかったのです。


仕方なくシバはヒルマ村に

戻ることにしました。


それからです。

レムロの噂話がノルウェア中に

広まりだしたのは。


スラム 人はレムロからもらった金で

買い物をする時、


『ジュリアの不治の病をレムロが治した』


『レムロは死者を復活させた』


『レムロはスラム人に金を恵んでくれた』


と言ってレムロを称賛する話を

バラまきました。


覆面の男レムロはノルウェアで

どんどん噂になり、噂が噂を呼びました。 そのうちに


『レムロは スラム人までも救ってくれる』


『この世の救世主』


など 話はどんどん飛躍していきました。


実際、不治の病が治ったジュリアの元にも

様々な人間が訪ねてきました。


"どのように不治の病が治ったのか"

"レムロの行き先"

"是非レムロに会わせてくれ"


ジュリア やその父ウィルは

そんな人たちの対応に追われました。


しかしレムロとの約束で

ジュリアもウィルも歯切れの悪い返答しか

できません。


しかしジュリアの病が治ったのは事実。

ノルウェアの人々の関心はどんどん

レムロに向かって行ったのです。


ノルウェアの街中がレムロの話題で

溢れ出した時、ヒルマ村から定期的に

やってくる売人が訪れました。


それはシバでした。


ヒルマ村の売人は基本、交代制で

続けて同じ人間が務める事は

今までなかったのですが、

レムロの件でジュリアの事を

よく知っているシバが続けて

ノルウェアに行った方が良いだろうという

村長や本人の提案がありシバがヒルマ村から村の工芸品を持ってやってきました。


シバが馴染みの道具屋に入っていきます。


シバ

「こんにちは」


道具屋ニール

「いらっしゃい。おや?シバさん」


シバ

「ニールさん。お世話になるよ」


ニール

「こちらこそ、村の皆は元気かい?」


シバ

「あぁ、相変わらずだよ」


シバが道具屋のカウンターに

工芸品を並べ始めます。


ニール

「でもよく暮らすよ。

 ヒルマ村からここまで来るのにも

 丸2日かかるのに。

 いろいろ不便だろう?」


シバ

「ヒルマ人は昔から質素を美徳と

 してきたから、気にしている

 ヒルマ人はいないよ

 それでも最近はこうして

 工芸品を作るようになって

 お金を得ることが増えたし

 豊かになったけどな」


ニール

「そうか、確か職人が村にいたんだっけ」


シバ

「そう、村に楽器職人が住むように

 なったんだ。彼がすごく器用で

 楽器だけじゃなく色々作る人で

 その奥さんもセンスある人でな」


ニール

「なるほどね」


シバ

「確かに街からは遠いが

 自給自足できるぐらいの土地や資源が

 あったし、こうして村の特産品も

 生まれたのはありがたいことだよ」


ニール

「住めば都ってことかね」


シバ

「そうだね。

 でも我々がここに一時、住んでいた時は

 ここの街の風習や習慣に慣れず

 苦労したな」


ニール

「まあ 私も田舎出身で、

 この街に慣れるまで大変だったよ。

 人間関係や習慣も冷めた割には

 自身の利益に関しては、くどいくらい

 しつこい人間が多いかな」


シバ

「でも私たちヒルマ人にとって

 このお店やニールさんがいてくれて

 助かってるよ」


ニール

「ヒルマの工芸品が素晴らしいし

 価値のあるものだから、私も助かるよ」


そんな感じでお互い世間話をしていると

ニールがこう切り出します。


ニール

「まあ 、そんなギスギスする

 こんな街だけど、最近ちょっと

 ある噂があってね」


シバ

「噂?」


ニール

「この街の銀行家ウィルさんの一人娘に

 ジュリアという娘がいるんだが

 この子が不治の病でね。

 だけどこの不治の病を

 レムロという男が治したという話だよ」


シバ

「えっ、レムロ?」


シバは驚きました。


ニール

「なんだい、そんなに驚いて。

 知ってる人かい?」


慌ててシバは


シバ

「いやいや 、人違いだった」


と誤魔化しました。


ニール

「とにかく、そんなレムロは不治の病を

 治してスラム街の人たちに

 お金を恵んでいるらしいんだ

 いや、凄い人がいるもんだよ」


シバは冷静にレムロの事を

ニールに尋ねます。


シバ

「そのレムロという人は

 どこに今いるんだね?」


ニール

「それがよく分からない。

 ただスラム街にレムロがいるという話も

 あるから、もしかするとそこかもな」


シバは更に問いかけました。


シバ

「いつからその噂は聞かれるように

 なったんだい?」


ニール

「だいたい10日前ぐらいかな。

 ほら、前回シバさんがここに来てくれた

 ちょっと後からだよ」


シバが前回ここに来たのが 2週間前。

それからヒルマ村に戻りジュリアを助け

すぐに街に引き返したのが10日前。

ジュリアを屋敷に送り届け

シバがヒルマ村に戻った後

この噂がノルウェア中に広まったのでした。


シバはニールにレムロの噂話を聞いた後

店を出ました。

そしてシバは次にジュリアに

会うことにしました。

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