第14話 懸念

ラウム

「ところで何故お前さんは

 この村の近くで倒れておったんじゃ」


ジュリア

「実は私、ノルウェアの街で生まれて

 小さい頃から体が弱く

 ペリアトル病という病なんです」


ラウム

「ペリアトル病じゃと?重い病と聞いたが」


ジュリア

「ええ、お医者様からもあまり

 長くないと言われました。

 お父さまも気丈に、

 病気を治せる医者を探しているから

 待っていてくれと

 いつも私に言ってました」


アナスタシア

「お嬢さんの勇気づけもあるし

 自身の勇気づけにも、そう

 言いたかったのね」


ジュリア

「ペリアトル病になると こうやって

 腕に発疹ができて・・・」


とジュリアが 長袖をめくる。

が腕には、発疹が1つもありませんでした。


ジュリア

「あ、あれ?発疹が無い!」


アナスタシア

「きっと治ったのよ」


ジュリアを再び 喜んでお礼を言い、皆

再び笑顔になりました


ラウム

「病気が良くなって何よりじゃ

 ただ、何故この村の近くでまで来て

 倒れておったのかね」


ジュリアは答えます。


ジュリア

「数日前の事です。

 ある男が私の家を訪ねてきて

 私の病気は治ると、言ってきたんです」


シバ

「男?」


ジュリア

「はい 全身覆面で名前をレムロと」


皆が一斉に緊張しました。


リュート「レムロだって?」


ラウム

「この前、この村に来ていた男か」


アナスタシア

「レムロが治せるって言ったの?」


ジュリア

「いえ、その男は"病を治す術を知っている"

だから、ここでは無理だから私を

 その治せる場所へ案内すると」


シバ

「アナ、ヒルマの皆はこないだ村長に

 簡単に聞いただけで、詳しくレムロという

 男を知らない。

 どういう男なんだ?レムロというやつは」


アナスタシア

「この間 、この村に来ていた覆面の男は

 私が昔、住んでいた屋敷で働いていた

 男で劇場の受付係よ」


アナスタシア

「とても卑劣 、卑怯な男で

 人を騙すことを平気でする人間よ」


リュート

「僕は何度か劇場に行ったから

 顔をまだ知っているけれど・・・」


ジュリア

「そして私がその男に連れられて

 ここまで来て、村の直前で疲れ切って

 休んでいたのですが

 その時、誰かに後ろから口をふさがれて」


シバ

「襲われたのか?」


ラウム

「おそらく、そのレムロがお前さんを襲い

 この村に助けられるように

 仕込んだんじゃ」


リュートがふと気がつきます。

もしかするとレムロがこの近くにいるかもと


リュートは外へ飛び出しました。


アナスタシア

「リュート?」


しかし 外には誰もいませんでした。

リュートは仕方なく家に戻りました。


レムロはジュリアが蘇ったことを確認すると そそくさと、この村を出ていたのです。


リュート

「レムロがいるかもしれないと思って」


シバ

「もしかすると復活する瞬間を見られたか」


リュート

「その可能性もある」


シバ

「そのレムロという人間の狙いは何だ」


アナスタシア

「おそらくこのベルだと思う。

 あいつが人助けをするような

 人間でないことは確かよ」


ラウム

「ではレムロはこのベルの力を

 どこかで知って今回のことを

 企ててたのか」


ジュリア

「あ、あのもしかして私

 ここに来ちゃダメだったですか?」


アナスタシア

「いえ、決してそうではないわ。

 むしろ、あなたのような方が

 救われる為にこのベルはあるの。

 問題はそれを悪用する

 人間がいることなの」


ラウム

「お嬢さん、今回のことはくれぐれも

 家に戻っても誰にも話さないように

 してほしい。

 重い病気が治ったのなら余計に

 そのことについて皆が聞きたがるだろう。

 このベルの力はとても魅力だが

 故に争いを招く可能性もある。

 おそらく お前さんを襲ったのも

 レムロじゃ。

 何かのきっかけで、このベルの力を知り、

 お前さんを利用して何か

 悪どいことをするかもしれん」


ジュリア

「分かりました。 このベルの事は

 誰にも話しません」


ラウム

「ではこの方を ノルウェアまで送ろう。

 シバよ。帰ってきた早々悪いが

 彼女をノルウェアまで送ってくれぬか」


シバ

「分かりました」


アナスタシア

「村長 。レムロはどうしましょう」


ラウム

「怪しいとはいえ、はっきりしているのは

 レムロがこの村に来た事、

 人を復活させる術がこの村に

 あることを知っている事ぐらいじゃ。

 もう少し様子を見る他あるまい。

 ただシバよ、ノルウェアにお嬢さんを

 送り届けたらレムロのことを街で

 聞き込みしてきて欲しいのじゃ」


シバ

「分かりました。 では数日また

 留守にしますから家内と子供のこと

 よろしくお願いします」


ジュリアは再度、皆に礼を言い

このヒルマ村を出て、シバと一緒に

ノルウェアに戻りました


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