第8話 ベルの力、再び
シバ
「た、大変なんだ」
ラウム
「どうしたんじゃ」
シバ
「ロ、ロッシがキルクの実を・・・」
ラウム
「!!キルクの実?ま、まさか食べたのか」
シバが今にも倒れそうなほど泣きそうな顔で ラウムに話しかけます。
シバ
「ど、どうしよう。
ロッシが・・・ロッシが・・・」
ラウム
「とにかく落ち着け、キルクの実の症状は
特効薬がない。できる限りの事はして、後は ロッシの生命力を信じるしかあるまい」
ラウムの家にはその時 アナスタシアがいて アクセサリーの出来具合を村長に
見てもらってた時でした。
シバの苦しい表情を見ていたアナスタシア。 その時 以前 リュートが殺されて工房に自身が駆け込んだ時の事が頭をよぎりました。
そしてその後ベルによってリュートが
生き返った事を思い出していたのです。
アナスタシアは "もしかしたら"と
思いました。
アナスタシア
「シバさん。その子に試したい事があるの」
シバ
「た 、試したいこと?」
シバは 力なく聞き返した。
アナスタシアとリュートは今まで
リュートがベルの力によって蘇ったことを 村人たちに言いませんでした。
しかし 目の前に、今まさに死んでしまうかもしれない 子供の命があります。
アナスタシア
「実は、私の夫 リュートは一度殺され、
とあるベルの力で生き返ったの。
もしかするとベルの力で ロッシを
助けられるかもしれない」
シバ
「そ、それは本当か!!」
シバの声に 途端に力が戻る。
アナスタシア
「正直 、補償はできない。
けど、他に説明しようがないの 。
リュートが生き返ったのがベルの力である
事としか」
ラウム
「そういう事でも、しないより
する方がマシじゃ。アナスタシア
急いでロッシの元へ行ってくれ」
シバ「頼む!」
死んだものが生き返る。
そんな話があるのか。
いくら 慈悲深い 善良な村人も信じられない話でした。
リュートとアナスタシアがこの村に来て
病気はあるものの、人が死んだりする事は
それまでなかったのです。
だから アナスタシア もリュートも
リュートを蘇らせたベルは大切に保管していても 日頃の会話には出しませんでした。
アナスタシアが一度、家に帰り
あのベルを持ってシバの家に。
シバは奥さんと一緒に ロッシのそばで
見守ります。
ロッシはすでに高熱が出始め 意識が朦朧としていました。
アナスタシアはベルを握り直し ゆっくりと一振りしました。
リュートが蘇ったあの日と同じように
静かに鳴らすと 辺りに美しい鐘の音色が
こだまします。
すると ロッシの苦しそうにしている顔が
だんだん 穏やかに・・・・
しばらくこだましているベルの音色。
全身の力が抜けたかのように
ロッシの表情がいつもの
あどけない表情に戻りました。
シバ
「おぉ、ロッシ・・ロッシ!!」
シバがロッシに話しかけます。
ロッシ
「・・・・ん?お父さん?
あれ?・・ここ何処?」
ロッシは意識が戻り、
高熱が嘘のように下がっていました。
シバ
「ロッシ!!良かった。本当に良かった!」
アナスタシアの鳴らしたベルが
見事ロッシを回復させ、シバ達、皆は
大喜びしました。
シバ
「ありがとう、アナスタシア。
本当にありがとう!」
こうして見事ロッシを救った
アナスタシアと そして ハンドベル。
ロッシが助かった話は村中に広がりました。
確かにベルはリュートを蘇らせ
ロッシを救いました。
しかし そんな ベルも 弱点があったのです 。
自然死では生き返らない事はもちろん
昔の先祖も生き返ることはないし
基本 肉体があり 死後、数時間以内でのみ
このベルを鳴らすと 生き返るようでした。
そしてある時 村長 ラウムは
村人を全員集めてこう言いました。
ラウム
「このベルはいくら 条件付きでも
人が生き返り病気を治す効果があることは間違いない。
正しく使われるなら良いが
それが 悪用すれば人の命が軽視され 大きな 犯罪につながる可能性もある 。
以前 我々の村が消滅したのも
利己的に走った人間同士の争いに
村が巻き込まれた為になった事でもあった。
この強大なベルの力を
村以外には知られないように
また使う機会が 極力ないように
生活しなくてはいかん」
村人は皆 慈悲深く私欲に走る人がいなかったので村長の話を 皆 納得して聞いたのでした。
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