第5話 オゾマの策略

アナスタシアは 次の日から公演に復帰しますが元気がありません。


いつもより元気がない アナスタシアに観客は心配になりました。楽しい歌も爽やかな 踊りも悲しげに見えました。

そんなアナスタシアに観客は

「元気出して〜」

と、声援を送ります。

いくら オゾマの劇場とはいえ観客は純粋に自分を応援してくれているだけなんだと、

アナスタシアはそんな声援を力に変えて頑張ります。


数日後 アナスタシアは劇場の鐘を見上げていました。

立ち入り禁止になった場所に何度も

リュートのことを思います。

すると 劇場の鐘の立ち入り禁止のところに

レムロと他の劇場のスタッフがいました。


何か話をしているようです。

アナスタシア は、ばれないように

そっと近づき 話を聞いてみました、


レムロ

「おい、今日から 観客に

"アナスタシアは最近元気がなかったのは

街の楽器職人に傷つけられて

元気がなかったからだ。

ただし アナスタシアはそれを忘れたくて

仕方ないから本人の前では絶対、楽器職人の話はするな"と言いふらせ」


レムロの声でした。

レムロは他のスタッフに嘘の情報を流して

噂を広めようとしていたのです。


その策略がオゾマの考えであることを

直感的に悟った アナスタシアは怒り

そして急いでリュートの元へ駆け出しました


"この噂が広まったら

リュートが傷ついてしまう"


リュートを守る 一心で

アナスタシアは走りました。


しかし劇場の外へ走っていくアナスタシアを

レムロ達が見つけます。


レムロ

「アナスタシア、どこへ行く!」


そんな声をよそに急いで リュートの工房に

向かう アナスタシア。

レムロはオゾマのところへ、他のスタッフはアナスタシアを追いかけます。


リュートの工房は歩いて30分。

走っても10分以上はかかります。

アナスタシアは馬車が通れない 狭い道を

選び リュートの工房へ向かいました。


オゾマはレムロからアナスタシアが

リュートの元に向かったと聞き急いで

馬車を用意します。

その時 オゾマの手に持っていたのは

短剣でした。


オゾマは焦りました。

我を忘れていたのです。


そもそも アナスタシアがいたからオゾマの財産は潤い今の経済力をつけることができたのでした。

アナスタシアに依存していたオゾマは

アナスタシアを失うことを恐れていたのです。 オゾマの根は小心者で臆病者でした。 それを隠すために 卑怯だったのです。


強さを勘違いしたオゾマは瀬戸際に立たされ

邪魔者は消すという短絡的な思考に走ったのでした。


アナスタシアの選んだ道の方が

距離的に短いルートでしたが

それでも馬車の方が早く先にリュートのもとに着いたのはオゾマでした。

そして 馬車を降りるなりリュートの工房に入ると楽器を製作していたリュートを見つけます。


リュートは何が何だかわからないまま

恐ろしい形相のオゾマを見て


リュート

「何ですか!」


と言いました。

オゾマは何も言わず 短剣を抜きためらわずリュートに向かって突進していきます。


グアァァッッ!!!


リュートの悲鳴が辺りに響きました。

オゾマは我に返り自分が殺人者になったことを認識しました。

そしてすぐに馬車でその場を立ち去ります。


少ししてアナスタシアが工房にやってきました。 工房には大きな悲鳴を聞いて駆けつけた 付近の住民が数人 集まっています。

アナスタシアは焦りました。

急いで工房に入るとそこには 腹部に短剣を刺されたリュートの姿があったのです。

アナスタシアはリュートの傍に行き

泣き崩れました。

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