第4話 劇場の受付係 レムロ

それからというものアナスタシアは生きる喜びを手に入れ公演にも力が入りました。

お客さんは喜びオゾマも満足でした。


満月の日になればアナスタシアはリュートに

手紙を渡すため、公演が始まる前に

手紙を劇場の大きな鐘の中に隠します。


そしてリュートがその手紙を受け取り

次にアナスタシアへの手紙を鐘に隠します。

そして公演が終わったら再びアナスタシアが

鐘の元へ来てリュートの手紙を受け取るのです。


手紙のやり取りの中でお互いの考えや未来を

語り合いました。アナスタシアもリュートも

幸せな日々が続いたのです。


しかしある満月の日

劇場の鐘に隠した手紙が屋敷の

とある人間にバレてしまいました。


その人物はアナスタシアが決まって

ある時から屋上の鐘の元に行くことを

不審に思っていた劇場の受付係レムロという

人間でした。


レムロはアナスタシアより前にオゾマに

孤児として引き取られ育ちました。

性格はオゾマに似て卑劣で人を平気で

裏切るような人間でした。

レムロはオゾマに対しては利用し利用されの

関係で、信頼関係はありませんでした。


レムロはアナスタシアが隠した手紙をそっと

手に入れて、オゾマへ渡しました。

レムロはこの手紙でオゾマから報酬が

出るだろうと考えていました。

実際オゾマはレムロに報酬を与え、

そしてすぐにアナスタシアを呼びます。


オゾマはアナスタシアが書いたリュートへの

手紙を見せつけて問い詰めました。


オゾマ

「これは何だ?」


アナスタシアは何も言えず黙っています。


オゾマ

「こんな、つまらん楽器職人に手紙な  

 ど渡しおって。お前にはもっと

 相応しい相手がおる!

 もう二度と手紙を出すなよ!」


と、アナスタシアに釘を刺しました。


アナスタシア

「彼を傷つけるのはやめてください

 私がここ数ヶ月間、公演で調子が

 良かったのは彼のおかげなんです

 だから彼を傷つける事だけは

 絶対にしないで・・・」


と、涙をこぼしながら言いました。


オゾマは考えました。

確かにここ数ヶ月間のアナスタシアは

いつにもまして好調で評判が良く

劇場のでの収入、つまりオゾマの

収入が増えていたことは事実だったのです。


オゾマ

「傷つける・・・何をバカな事を

 全てはお前を守るためだ。心配するな」


そう言ってはぐらかしました。

いつもの手です。そしてオゾマは、


オゾマ

「もう手紙を出すなよ」


と言って、その場を立ち去りました。


アナスタシアは一人泣きました。

そしてリュートの事が心配になりました。


そしてオゾマはレムロにある指示を出します


“劇場の鐘に男が現れるまで見張れ

そして男が現れたら、すかさず話しかけ

『立ち入り禁止になった』と声をかけろ"

と命令しました


その後、リュートがいつもの様に劇場の鐘の元にやってきました。

が、アナスタシアの手紙がありません。

リュートはアナスタシアの事が心配になりました。

『何かあったんだろうか・・・』

と思ったその時です!


レムロ

「何をしてるんですか?」


レムロがリュートに話しかけてきました。


リュート

「べ、別に・・・・」


声をかけられ慌てるリュート。

犯罪をしてるわけじゃないのに

隠れて手紙のやり取りをしている事で

リュートの心に動揺が生まれました。


レムロ

「すみません、ここはしばらくの間

 立ち入り禁止になるんで・・・・

 お客さんどいてもらえますか」


リュートに嫌らしく言いました。

リュートは仕方なく立ち去りました。


その日の公演はアナスタシアは体調不良

という事で出演は無しになりました。

リュートは一応劇場に入りましたが

アナスタシアの事が心配で心が一杯でした。


そして更にオゾマは公演中に

レムロにこう指示します


"劇場の鐘の元に現れた男が帰ろうとしたら

その後を尾行して、家を突き止めてこい"


そんな事になっている事とは知らずに

アナスタシアの出演しない公演を

リュートは静かに観ているのでした。


公演が終わりリュートが帰り始めると

レムロはこっそりとリュートの後を尾行

しました。


時刻は夜。美しい月がリュートには

悲しく映りました。

アナスタシアの事で心が一杯で尾行には

全く気が付かなかったのでした。

そして楽器工房にリュートが入っていく

様子をレムロが確認すると、レムロはまた

オゾマの屋敷に戻っていきました。







           

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