第103話 まずはキルベト・クムランにいってソルガムやミレット、ヤムイモを植えてみたよ
さて、エリコの村長であるマリアに相談したことで、俺達家族がエリコを離れている間の家畜・家禽や畑などの世話などはエリコの住人が分担して請け負ってくれることになった。
これで安心して俺達家族揃って下見も兼ねてエリコの外へ泊まり込みで出かける事ができるな。
今回の下見はまずはキルベト・クムランをベースキャンプにして、死海の水面を利用して温泉のあるハママートマインとエン・ゲティに行ってみようかと思っている。
このあたりをまず見ようと考えた理由だがキルべト・クムランは何度か訪れているので、生活拠点にすることが可能なのはわかっていることと、移動にヨルダン川や死海といった水路を利用できるからだ。
息子もまだ小さいし、キルベト・クムランにはソルガムやミレット、そしてヤムイモの種芋を植えてくるつもりだから石鍬なども持っていく必要がある。
もちろん飲料水を入れておく水瓶や食料、狩猟に使う弓矢なんかも必要だ。
それらの荷物を運ぶのに船が使えるのは都合がいいからな。
エリコからキルベト・クムランまでは15キロほどだから3時間から4時間位を船などで移動すれば行ける。
なので、以前にキルベト・クムランに行った時のように水のたっぷりはいった水瓶、そこから水をすくって飲むためのカップ、硬めに焼いたパンとチーズやドライフルーツに小麦等の入ったツボ、魚をすくうためのタモ網、調理用のタジン鍋、地面に敷くためのものと体にかけるための薦、火を起こすための弓切り式火起こし器、獲物を捕まえるための弓矢に石器のナイフ、後は石鍬にタンドールのような粘土製の持ち運びできる壷窯型オーブンといった道具を一通り用意して、入るものは背負籠に入れて、薦は丸めて紐でくくりつけて葦船に乗せ、家族全員船に乗ってパドルで南に進んでいく。
今回使うのが水竿ではなくパドルなのは死海を横断するからだな。
「アイシャ、今回も水に落ちないように気をつけながら魚をすくってくれるか?」
魚を掬っておけば食料として利用できる。
「わあったー」
とアイシャの暇つぶしついでに小魚をすくわせると息子も言った。
「ぼくもー」
「ああ、じゃあお前さんもやってみようか。
リーリス、息子が川に落ちないように支えてやってくれ」
「わかったわ」
ということでアイシャや息子がリーリスの補助を受けつつ魚をすくっては、捕まえた小魚をリーリスが活け締めして食料の確保をしているうちに、キルベト・クムランについた。
そして乾季には枯れて水無川となるクムラン川へ、船をつけてアイシャを船から下ろし、息子を背負ったリーリスに船から降りてもらい、葦船を岸に引き上げて、背負籠を背負い、手に荷物を持った。
今は水が枯れているクムラン川を上っていくと、チョロチョロと水が流れ始め、緑が見え始めた。
「後ちょっとだぞ」
俺はリーリスにそのように声を掛ける。
「はいはい、じゃあとちょっと頑張りましょうか」
岩山の山肌から水が吹き出して滝になっているところで水瓶に水を入れて飲水も補給する。
そして、休憩を兼ねた食事のため少し開けた場所で弓切り式火起こし器を使って火を起こし、魚を木の枝に串のかわりにさし、チーズを乗せたパンも火で炙る。
やがて魚に火が通るといい香りが漂ってきた。
「さて、そろそろ焼けたしくおうか」
「そうね」
「たべるのー」
「たべるー」
ちゃんと活け締めをした魚と、炙ったチーズを乗せたパンはとてもうまい。
しばらく休憩した後、俺はクムラン川のそばの地面を軽く耕してソルガムやミレットの種を巻き、ヤムイモを一つはそのままで、もう一つは適当な大きさに切って種芋として埋めた。
ソルガムやミレット、ヤムイモの種まきや植え付けには、まだ少し早い可能性もあるが多分このあたりの気温なら大丈夫だと思う。
後は秋になったらソルガムやミレットがちゃんと育って収穫できればいいんだがな。
まあ最初は試行錯誤も必要だろう。
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