第100話 今のうちにキルべト・クムラン以外にも避難先をある程度考えておくことは必要か

 さて、冬も終わり春が来た。


 冬の間になくなったのは生まれて半年ほどで高熱を出してしまい、そのまま呼吸困難で死んでしまった男の子と男性の老人がいたが、以前に比べれば相当少なくなった。


 それはいいことだが、あまり急激に人口が増えすぎても困るんだよな。


 エリコ自体は最大20000人位の人口を抱えることができるようにはなるだろう。


 しかし、エリコは9370年前頃に放棄されることはわかっているし、おそらくそれは大洪水によるものだと思う。


 つまり後100年ちょっとでエリコは一度水の下に沈むと思うんだよな。


 その時の避難先としてキルベト・クムランがあるわけで、今から俺はそちらでのソルガムやミレット、ヤムイモの栽培などを始めようとしている。


 しかし、100年後のエリコの人口がどのくらい増えているかはわからないが、キルベト・クムランだけではエリコの全住人を受け入れ養っていくることはおそらくできないだろう。


 なので他にも移住できる場所を探さないといけないんだよな。


 まあ、洪水が起こることをエリコの住人が信じないで、ほとんどの住人は水に飲み込まれる可能性もあるが。


 いずれにせよ移住先には、生きていくため必要な飲料水と食料に寒暖や雨をしのげる洞窟や洞穴のような場所がある、あるいは住居を建てるのに向いていることは必要だ。


 そしてその場所に人間の集落がないことも大事だ。


 しかし当然のことながら居住に適した場所にはすでに人間の集落がある可能性が高い。


 カルメル山の遺跡群:ナハル・メアロットには旧石器時代から人間が居住していたらしいし、ハイファ地区のアトリットにも人は住んでいるらしいからな。


 おそらくアナトリアなどから来ている商人はアトリットを中継地点にしているんだろう。


 エリコの比較的近い場所にも人間の集落があるのは間違いがなく、どんぐりやナッツを拾う時に他の集落の人間と遭遇したことがあるらしいからなぁ。


 だが、大洪水が起きたときの移住は必要だが、だからといって他の集落の人間を追い出してまでやるようなものではないし追い出された側が恨みに思っていたら襲撃を受けたりする可能性もあるだろう。


もちろん、エリコ同様に大洪水が起こった時に集落が水没してしまうような場所では意味がない。


 そでまあ、そういった条件に合いそうなのは死海の西にあるエン・ゲディのオアシスだ。


 だから余裕がある時にエン・ゲディを見ておきたい。


 エン・ゲディは21世紀ではホテルが立ち並ぶリゾート地となっているが、聖書の中でもエン・ゲディは”エン・ゲディのぶどう園にあるヘンナの花房”に言及されており、この地域は肥沃であったらしい。


 エン・ゲディはオアシスの浸食作用によってくぼ地になっており、亜熱帯性の植物であるナツメヤシやアラビアバルサムノキなどの生育や、ぶどうやいちじくなどの果物の栽培にも適しているようだ。


 近辺は荒野が広がっていて、住む場所としては不便な場所なので、おそらく人間の集団は現在は住んでいないだろう。


 こういう場所はありがたい。


 あとはユダヤ山脈にある現代のエルサレムのある場所かな。


 エルサレムのあたりにはヨルダン川のような大きな川もなく、ここに集落ができたのはおよそ5000年ほど前なようだしな。


 現状でエルサレムのあたりには人の集落がないのはおそらく狩猟採取がメインの今の時点ではヨルダン川の川沿いより、食料の確保がし辛い可能性は高いが。


 とはいえ、およそ9千年前に存在したと推測される新石器時代の約3千人の住民が暮らす古代都市大都市の遺跡が、エルサレムから5キロほど西に進んだところにあるらしいからそこを見てきてもいいかもな。


 エルサレムからエリコまでは、およそ24キロぐらいだそうだから実はそこまで遠いわけでもない。


 また聖書にあるエデンから流れ出す4つの川のなかの2つはチグリス川とユーフラテス川だが、残り2つのピション川とギホン川は現存せず、それがそのような川だったかわかっていない。


 しかしエルサレムには多くの人間が住むことができる湧き水が有るし細いものならば川も他にある。


 キデロンの谷の洞窟内にあるギホンの泉は、後々までエルサレムの水源として用いられてきた。


 やはり、機会があればエルサレムにも訪れるにこしたことはないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る