第99話 人間は飢餓から逃れるため毒のある食材の毒抜きを試行錯誤してきた
さて、ヤムイモの種にもになるものを手に入れたのは僥倖だがヤムイモだけでなくタロイモやキャッサバなどイモには毒を含む種類が多い。
さつまいもは無毒だがじゃがいもの芽の周りも毒を含むようになるしな。
デンプンとして地下茎や根に栄養を蓄えると当然それを目当てに動物に食べられる可能性が高まるからそのための自衛策なのだろう。
ちなみにヤムイモは700万年前からあった。
毒があるとわかっていても人間はかなり古い時代から芋を食べていて少なくとも10万年以上前からソルガムやミレットのすりつぶしたものと一緒に焼いたイモを食べていたのは間違いない。
人間の歴史は飢餓との戦いの歴史だ。
まず人の祖先がまだ類人猿であった時、まず人間たちとオランウータンやテナガザルとはおよそ1300万年ほど前に分岐し、人間たちとゴリラの分岐年代がおよそ約1000万年前、人間とチンパンジーの分岐年代が約700万年から約680万年前、チンパンジーとボノボの間の分岐年代が230万年前と言われてる。
人間たちとオランウータンが分かれた理由ははっきりとはよくわからないが、ゴリラと人間たち、チンパンジーやボノボと人間が分かれたのは住む場所つまり果樹のなる熱帯雨林を追い出されたせいだと思う。
新生代中新世の前半の約1900万年前から1600 万年前は温暖期にあたり、地球の気温はかなり高く熱帯雨林も大きく広がっていた。
しかし、1600万年以降は寒冷化が進んでいき、650万年前は寒冷化により南極氷床や北極付近での氷河の形成により海水準が約40mも低下し、地中海は大西洋と孤立し内陸湖になったらしいが、アフリカの果樹が実る熱帯雨林も大きく減少して森林サバンナや森林ステップになった。
そしてその森林サバンナや森林ステップ地域に取り残されたのが人間やチンパンジーたちだ。
ちなみに野生のチンパンジーはヤムイモの種子や葉は食べてもイモは食べない。
人間や動物園のチンパンジーはイモも食べるけどな。
イモの類をいつから人類が食べるようになったのかははっきりとはしないが、なんで人間がヤムイモを食べるようになったのはチンパンジーの食べ残したヤムイモの残った部分の根っこなどを食べていたからじゃないかと思う。
更に寒冷化による乾燥により森林サバンナや森林ステップに残った森がほぼ消滅する地域が増えた。
それにより人間はそういった地域の周辺部に追いやられたらしい。
600万年前ほどに存在したらしい最古の直立歩行が確実なオロリン・トゥゲネンシスは果物や野菜を好んで食べたが、肉類も時々食べていたらしい。
しかし時代が下って、約400万年前 - 約200万年前に生存していたとされる、アウストラロピテクスの食料は肉食獣の食べ残しをあさり、果物や野菜も食べていたようだ。
250万年前ほどには石器の利用が始まったことで、小動物の狩猟も行われるようになったらしい。
石器を利用する時代区分は旧石器時代は約250万年前から2万年前頃まで、中石器時代は2万年前から1万年くらいまで、新石器時代は1万年前くらいから5000年くらい前とされるがサハラ以南のアフリカやオセアニア、南北アメリカなどは白人の侵略があるまで石器時代が続いていたりもした。
まあ、それはともかく豊かな果実が実る熱帯雨林を追い出された人類は20世紀までつねに飢餓と戦っていた。
農業や牧畜が始まって食料の確保が安定したかに見えたが干魃や冷害、洪水などの天災でそれらが得られなくなることも度々あった。
そういった時は毒を除いて彼岸花の球根や蘇鉄の幹に含まれるデンプンを食べたりしたくらいだ。
そして火を利用するようになったのは約180万年前ぐらいからだが火起こしができるようになったのは80万年前くらいと言われているらしい。
そういう事もあって人間は火を使うようになったわけだが、火で焼くと普通に生で食べられる果実や植物の新芽以外にも肉や魚を食べやすくすることができ、なおかつ寄生虫などを殺すこともできるようになった。
また、繊維を使って袋を作ることでイモやどんぐりなどのアクの多いものを食べられるようにもなった。
そしてアルカリで煮ることで毒抜きをできる種類は大幅に増えた。
21世紀の日本人がよく食べるもので原材料が猛毒であるものといえばこんにゃくやしらたきに使われる原料のこんにゃくイモだ。
こんにゃく芋に含まれるシュウ酸カルシウムは、消石灰である水酸化カルシウムや貝殻焼成カルシウムで抜くことができる。
ちなみにたけのこやゼンマイ・わらびなどの山菜、ほうれん草などのエグミの原因はシュウ酸だがこれも糟や重曹などのアルカリで抜くことができるな。
ふぐの卵巣の毒も2年ほどぬか漬け・粕漬けにすると毒を消せるのもアルカリが関係するかもしれない。
なおふぐの毒はふぐが食べている貝の貝毒が蓄積したものなので養殖で貝毒を摂取しないようにすれば無毒なフグを育てることはでき実際2015年ぐらいまではそうやって無毒化したフグの肝を食べることができた。
しかし、石川のゴマフグは5月~6月に漁獲された天然物だ。
ゴマフグの身は水っぽくって鮮度も落ちやすいので、フグとしては安いが、白子つまり精巣には毒がなくこちらは美味しいのでよく食べられているらしい。
しかし卵巣は猛毒なので本来捨てなければいけないわけだがなんとか食べられないかと試行錯誤した結果なのだろう
ちなみにゴマフグは皮も猛毒だが三枚に下ろして、強毒の皮をつけたままぬか漬け・粕漬けにすると皮の毒も除去できるため酒の肴として地元では食べられていたりもするようだ。
まあ、毒キノコなんかの毒は加熱しようとアルカリを加えようと消えないことが多いので、何でもかんでも毒消しをできるわけじゃないんだけどな。
まあ、シャグマアミガサタケという毒きのこはキノコを大量の水で、少なくとも5分以上煮沸してから茹で汁を捨て、大量の水でじゅうぶんに煮汁を洗い落としてから、もう一度5分以上茹でることで一応食べられるようになる。
なおこの時に茹でた蒸気を吸っても中毒を起こして死ぬ可能性があるんだが、それほど危険でもうまいのでフィンランドを中心としたヨーロッパではよく食べられているらしい。
まあ、猛毒を持つふぐを刺し身にしたり、卵巣をぬか漬けにして食べたしすると言ったらフィンランド人でも驚くかもしれないがな。
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