第92話 この時代は星空が本当にきれいなんだ
さてさて、アイシャや息子も大きくなってきて、太陽が沈んでもすぐに寝付けないこともたまにはでてくるようになった。
ちなみに基本的にこの時代の照明手段は木を燃やす焚き火位で、燃料資源の少ないエリコでは、太陽が沈んで夜になったらさっさと寝るのが普通だ。
だが子供が寝られないような時は子どもたちが眠くなるまで語り聞かせをしたり、子守唄を歌ったり、思い切って夜空の星を眺めたりする。
今日は晴れているので家の外に出て家族みんなで毛糸の帽子や手袋をちゃんと身につけながら星を眺めてるところだ。
当然のことながらこの時代はものすごく空気がきれいだし、地上の明かりもほぼないから星はものすごく良く見える。
「とーしゃ、おほししゃま、とってもきれーだよ」
アイシャは星空を眺め上げながら嬉しそうに言う。
「おう、星の光が綺麗だな」
「そうね今日は風もなくてちょっと暖かめだし
星を見るにはいいわよね」
リーリスもそう言いながら夜空の星を眺めている。
「きえー」
息子も嬉しそうにそういう。
今日は月は新月なので空にでていないのも有って余計に星が良く見える気がするな。
そしてアイシャが星を指差して言う。
「あそこにわんちゃがいるのー」
「ん、ああなるほど、あそこに犬がいるな」
アイシャが言ってるのは全天21の1等星の中で最も明るいシリウスのある多分おおいぬ座だろう。
「で、あっちがとーしゃで、こっちがあちしとかーしゃなの」
とーしゃと言ってるのがオリオン座、あちしとかーしゃと言ってるのはふたご座かな?
「なるほどなー、アイシャにはそう見えるのか。
すごいぞアイシャ」
俺がそう言ってアイシャを偉い偉いと褒めながら頭を撫でるとアイシャは喜びながらバンザイする。
「あいしゃすごーい」
「うーん、いわれてみれば確かにそう見えるわね」
リーリスもアイシャの頭をなでながら感心したように言う。
もちろんこの時代にはまだギリシャ神話はないし星座の名前もない。
けども星を季節の目印にしたり神様の使いにするようなことは古い時代から行われていることだ。
そして星座の形などに関して言えば21世紀でもこの時代でもほぼ変わらない。
だから夜空の星はずっと変わらないかというと多分そうではないんだろうけどな。
「あっちはかにしゃんだよー」
「なるほど、たしかに蟹っぽいな」
そんなやり取りをしているうちにアイシャも眠くなってきたらしくて目がショボショボとしてきた。
息子はいつの間にか寝てしまっていたようだ。
「アイシャ、もう眠いかな?」
アイシャはコクリと頷いた。
「じゃあ、そろそろ家に戻って寝るか」
俺がリーリスに言うとリーリスも頷いていう。
「そうね私も眠くなってきたし家に戻りましょう」
うつらうつらとしているアイシャの手を俺とリーリスで取り、息子は俺がおんぶしながら家に戻るとアイシャは安心したのか寝藁の中ですぐに眠ってしまった。
「なんだかんだではしゃいでいたし疲れちゃったのね」
「そうだな、でも眠くなったならそれはそれでいいことだ」
すやすや寝息を立てているアイシャや息子はなんだか嬉しそうだし、大きな怪我や病気もなく育ってくれて本当に良かったぜ。
まあそのために色々やってきたわけでもあるんだけどな。
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