第78話 そろそろ下着を作ろうか

 さて、そろそろ冬に備えた服を用意する季節になってきた。


 つまり、亜麻ではなく毛糸や毛皮の素材の衣服だな。


 夏に着る亜麻の服は布を二枚縫い合わせて、頭と腕を出す穴のみ縫い残した筒型衣で基本的に袖はつけない。


 しかし、毛皮の場合は中央に穿たれた穴から頭を出して着る貫頭衣で、袖もつける。


 その理由として防寒もあるが秋は森にも入るから、腕を切ったりしないように長袖が必須なんだな。


 同じように森に入るときは怪我をしないように足元にはサンダルも履く。


 足の怪我から破傷風菌が入ってしまうとわりとやばいので、暑い場所でもサンダルは早くから使われていたようだ。


 しかし、袖付き貫頭衣だとわりと着たり脱いだりも大変なんだよな。


 とはいえ全身をくまなく覆う断熱効果の高い衣服は氷河期には絶対必要だったわけだが。


 そもそも、人類がシベリアなどの寒い地域で暮らせるようになったのは、約4万年前に縫い針が発明されたからだ。


 細い骨や牙などを石器で削って鋭くとがらせ、石錐で小さな穴を開け、動物の腱を噛んでなめして糸にし、それらで鞣した獣や魚の皮を縫い合わせて、体に沿った衣服、靴、帽子、手袋などをつくり上げることで、全身ほぼ全部を覆うことができるようになり、気密性が高い防寒機能を持った衣服が作れるようになった。


 これにより氷結したベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸まで人間は到達する事ができた。


 ちなみに人間は食べるものが赤身の肉のみだと得られるカロリーより消化に必要なカロリーのほうが多く餓死してしまうので、脂肪分を多めに食べることで、赤身の肉や内臓などは食べ残すため、そこにオオカミが寄ってきて人間に懐いたことで犬になり彼らが狩猟で役に立つと理解すると犬にも多く肉を分け与えていたらしい。


 この時ヨーロッパからコーカサスを支配していたネアンデルタール人も、皮の衣服を着ていたことは間違いないが、彼等は縫い針を開発できなかったらしい。


  またネアンデルタール人は10キロほど離れた場所の他の集団と物々交換、すなわち交易を行うこともなかったようだ。


 それにより6万年ほど前からホモ・サピエンスやクロマニヨン人とネアンデルタール人は交雑しつつ過ごしていたが、およそ5万年前からネアンデルタールの人口が減少し始め、集団が孤立していき、両者は同じ動物を捕獲したことで集落の規模の小さなネアンデルタール人の集団を孤立させ、イタリアで大規模な火山の噴火が起こった事により4万年前のヨーロッパはひどく寒冷化し弓矢を開発できなかったことがネアンデルタール人を絶滅させたらしい。


  同様なことは東アジアからオセアニアにかけて住んでいたデニソワ人にも言えるがデニソワ人の絶滅は14500年ほど前でかなり遅いが、デニソワ人は暖かい場所にもすんでいて島にもいたからだろうと思う。


 因みにクロマニヨン人の絶滅理由はノウマ・ヤギュウ・マンモス等の大動物が減少・絶滅すると、栄養を確保できなくなったかららしい。


 まあそれはともかく寒さに対応できる衣服の発明の差が集団の数の差になったというのも皮肉な話だ。


 まあ、このあたりは冬の寒さもそこまできついわけではないのでズボンのようなものは作っていないが。


 しかし下着がないのはだいぶ不便だしやっぱ作ったほうがいいかもな。


「それに、いまのままだと幾つか欠点があるのも事実だよな」


 貫頭衣タイプの服は脱ぎ着が大変なんだ。


「まずは女性用の下着を作ってみようか……と言ってもこれは協力してもらわんと作れんが」


 俺はリーリスを呼んだ。


「おーい、ちょっと新しい服を作ってみたいんで、リーリスにも手伝ってもらえないか?」


 リーリスはもちろん拒否はしなかった。


「うん、いいわよ。

 で、何をすればいいの?」


「ちょっと試したいことが在るんで着ているものを脱いでほしい」


「いいけど……一体何を?」


 俺の目の前でリーリスに脱いでもらってまず胸の下着を試してみる.


 長方形の布を真ん中でねじって胸の谷間に当たるように彼女の胸に当てて、左右の乳房下部を包むように当てた後でその左右も捻ることで布を袋状にする。


 その後は陰部の下着だ。


 同じよう長方形の布を真ん中でねじって前後に当てて上が彼女の腰骨あたりの位置の長さになるように揃える。


「裸のままだと寒いだろうから一回着なおしてくれていいぞ」


「う、うん……」


 まあ、彼女からしたら意味がわからないんだろうがな。


 俺は胸の形状に合わせて左右の乳房下部を支えられるようにした乳あてのねじったところを縫って止め、左右を切り離した左右に麻ひもを縫い付けるとともにちょっと引っ張ってみてちぎれたり取れたりしないことを確認した。


 古代ギリシアで、歩行時に乳房が動かないように布製の小さな帯のアポデズムをアンダーバストに巻きつけたが、某ラノベの、某かまどの女神様の例の紐のように乳房の下の部分を帯で持ち上げるだけでも乳房が揺れなくなって動きやすくなるメリットは有る。


 全部覆ってしまうのと違い、授乳がしやすいというメリットもあるしな


 同じように陰部用の布も捻っては在るが長方形の角の部分にそれぞれ紐を縫い付けてちぎれたり取れたりしないのを確認した。


 これは原始的だが紐パンツだな。


「よし、できた」


「できたの?」


「ああ、悪いがもう一度服を脱いでくれ」


「うん」


 俺は全裸になった彼女の胸に乳袋を当てて、その左右に付けた紐を背中で蝶結びにして結んだあと、前側も結んだ。


 同じように陰部に布を当てて腰の左右で紐を結んでみた。


「これでいいと思うが……どうだろう?」


「うん、いい感じだと思う、胸も楽だし下もぴったりだよ」


 とりあえずは簡素で原始的なブラジャーと紐で結ぶV字のショーツができたわけだからこれで行こう。


 まあ、毎日同じものという訳にはいかないから同じものをあと2つか3つは作らないといけないがな。


「とーしゃあたしのはー?」


「ああ、アイシャの分も作るぞ」


 と言っても紐で結ぶV字のショーツはともかく、胸は膨らんでないのでブラジャーはいらないが、その代わり胸までぐらいの丈の筒型衣を作ってやった。


「わーい、かーしゃとおそろいー」


「よかったわね」


 ついでに皮の防寒着である上着も着やすいようにしてみよう。


 前の部分を2つに切って前合わせで着られるようにし、ボタン穴を開けてその周りを縫うことで裂け目が広がるのを防ぐようにし、淡水貝の貝殻を丸く削って穴を4つ開けてボタンにしてボタン穴と反対の部分に縫い付けていきそれを何個かつける。


「下着を着たら、その上にこれを着てみてくれ」


「うん、でも、どうやって着ればいいのかしら」


「ああ、こうやって……」


 と俺はボタンをボタン穴に通して服とズボンの前を留めてみた。


「へえ、これ、いいわね。

 すごく脱ぎ着が楽よ」


「ああ、気に入ってもらえたみたいでよかったよ」


「うん、本当にありがとう」


 いや、喜んでくれてよかったよ。


 もちろんアイシャや息子にも同じように作ったよ。


 俺の分は一番最後だ。


 因みにリーリスが自慢気に彼女の母や妹のリーリム、などに見せた所で彼女たちから俺に同じものを作るように要求されたのは言うまでもない。


「だって、あんなに胸が大きく見えるようになるものをお姉ちゃん一人だけが持ってるのはずるいもん」


 まあ、下乳を押し上げるような形にすれば胸はデカく見えるわな。


 なので結局はリーリムやお母さんたちにも作ったし、村長のマリアやアイシャの友達のマリア経由でその家族の女性につくるようにいわれけど、そこまでは難しいので俺は女性らを集めて作り方を教えた。


 ちなみに男の下着としてはふんどしのような長めの布に紐をつけたものにしたよ。


  こういった男性用下着も古代エジプトではすでに使われていたらしいけどな。

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