第58話 最近は雨でもでかけることが増えたし雨具を作るか
さて、本来エリコでは冬の雨季には家に閉じこもってのんびり過ごすのが普通なわけだが、最近は子供が下痢をしたとか、咳き込んでるとかで呼び出されることも増えた。
このあたりの雨は日本のような土砂降りになることはほぼ無いが、この時代では一度濡れてしまうと身体を温め直すのがとても大変なのだ。
まあ、サウナを使えばなんとかなるとは言えるけどな。
そういうこともあって雨続きになったりした時に雨を避けることができる雨具はやはりほしい。
こういうときもスマホさんの出番だ。
そして日本では昔から使われていた藁を使った笠や簑の存在とそれの作り方を教えてくれるサイトや動画があったんでそれを使って自分で作ってみることにする。
日本においては笠や蓑などは稲の茎や菅、茅、僧侶などが使うのはい草などで作るのが基本だったようだが、ここエリコには稲はないから麦わらで代用する。
簑や茅葺きの屋根などある程度撥水性のある繊維に雨粒がかかっても、繊維に沿って水が流れていき、内部には滲みこまないため雨よけに使えるんだな。
また藁は寝藁に使われるように、藁の断面は中空構造で多重になっているため保温にも優れていたりする。
水辺に生えてるはずの葦などでも代用はできそうだけどな。
まずは麦わらの真ん中あたりを叩いて柔らかくする。
それをやっていたらアイシャが声をかけてきた。
「とーしゃ、ないしてんの?」
「ああ、最近雨が増えてるけど、どうしても出かけないといけない時があるから、雨に濡れないようにする雨具を作ろうと思ってるんだ」
「あまぐー?」
「そうだ、まあアイシャは雨の中で出かけたりするなよ」
「わあったー、でもあいしゃもやいたい」
「ん、雨具作りか?」
「あい、そうでち」
「わかった、じゃあアイシャもやってみようか」
とか言っていたらリーリスもやってきた。
「あら何をしてるの?」
リーリスにそう聞かれたのでアイシャのときと同様に
「ああ、最近雨が増えてるけど、どうしても出かけないといけない時があるから雨に濡れないようにする雨具を作ろうと思っるんだ」
「確かに最近はよその家に急に呼ばれることも多いし、雨に濡れないように出来るのならそのほうがいいかもしれないわね」
ということでみんなで雨具づくりをすることにした。
実際には笠や簑の作り方は農家ごとに違うらしいけども、とりあえずはスマホで見つけたやり方を実践してみる。
まあ、慣れた人でも2日から3日くらいはかかったらしいが焦らずにやるとしようか。
しかし以前に毛糸の指編みで編み物をしたのが功を奏して麦わらを編むのはそこまでは難しくなさそうだ。
笠を作るには骨となる部分に葦を使い平べったい三角錐の笠骨を作ってから裏側は骨をくるくると回るように麦わらを巻いていき、表は頂上から周辺にまっすぐおろしていくように編んでいけば笠に出来る。
麻の紐を通して顎で止めれば原始的な帽子でもあり雨具でも在る笠の出来上がりだ。
「これがあれば頭が雨に濡れるのを防いだり、真夏の暑さを遮ることができたりするはずだ」
俺がそういうとリーリスは笑っていった。
「それはいいわね」
んしょんしょとがんばって編み込んでいたアイシャも小さな笠を作れたようだ。
「できたー」
「おお、できたな。
アイシャはすごいな」
「あい、あちしすごーい」
で、それでまず一日が終わってしまったので翌日からは肩簑と腰蓑を作る
まず肩簑で麦わらを編んで首周りを回すものを作って、そこに網目のようなものを作り、そこに麦わらの束をうえこんでいき首から下に麦わらを重なるように垂らしていく。
ちなみに肩簑は重いものを背負子で背負うときのクッション材としても使われていたらしい。
これで一日終わってしまったので、さらに翌日は腰簑を肩簑と同じ要領で作っていくとそれなりの形ができあがった。
「おお、いい感じだな」
「私もあなた用に作ってみたわ」
「ああリーリス、ありがとうな」
「うまくできてよかったわ」
で、実際に身につけてみることにする。
「こんな感じかな?」
俺は腰蓑を腰に巻きつけて前で紐で結び、肩箕も肩からかぶってひもでしばって着てみた。
流石にかさばってそれなりに重いが、いい感じだ。
いまの服の上にこれをかぶれば防寒にも役に立つだろう。
「うんうん、いい感じだよ、本当にありがとうな」
「いいえ、どういたしまして」
こうして寒いときや雨が降りそうな時には笠と蓑を身につけることで防寒と雨対策ができるようになった。
流石に嵩張りすぎて動きづらいのはどうしょうもないがな。
手持ちの傘はまあ無理だろうということで最初から諦めたけどな。
もっとも傘の歴史も意外と古く約4000年前の、古代エジプトやペルシャなどでは使われていたらしいが、雨をしのぐためではなく、日傘として使われていたようで雨傘として使われるようになるのは18世紀頃かららしい。
撥水性のある布あるいは紙を作るというのはそれだけ難しかったんだな。
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