第44話 冬になる前に嫁と嫁と娘のために羊毛を紡いで防寒着を作ってやろう
さて、夏も終わりに差し掛かり涼しくなってきた。
そろそろ子供を授かるために頑張ってる嫁と娘のために羊毛を加工して防寒具を作ってやろう。
羊の数は結構増えてきたので、夏毛への生え変わりの時期に刈った羊毛はたくさんあるからな。
刈り取って保存しておいた羊の毛を洗って乾かし、手で伸ばして木製
毛糸ができた後は二本の棒で編んでいく。
毛糸は伸縮性が高いので亜麻よりずっと手編みがやりやすい。
「あら、何をしてるの?」
リーリスが聞いてくる。
「ああ、刈った羊の毛を糸にしてそれを編んでるんだよ。
そのうち寒くなるからリーリスと娘のために暖かい服をあもうと思ってる」
「へえ、棒と指を使ってそんなことができるのね」
「ああ、指だけでも編むことは出来るはずなんだけど、大きいものを編もうとすると、おれはこっちしかやり方がわからないんでな」
実際に指編みの説明だと細めのマフラーとかニット帽暗いまでしかなくてセーターとかはないんだよな。
実のところ羊毛が使われだしたのはメソポタミアではあるのだがもう少し先で紀元前3200年ごろ。
それまでは屠殺した羊の毛皮を剥いでそのまま鞣して体にまとうだけだったのだな。
まあ毛皮は温かいから使い方としては間違ってはいないし、実際に昨年まではタンニンで鞣した革や毛皮を防寒のためにつかっていた。
しかし、羊を殺してその毛皮をまとうだけだと、食べるために必要な羊の数しか毛皮はとれない。
そして毛皮にするためだけに羊を殺してしまうと、羊の数がどんどん減っていってしまう。
そうして悩んでいたところで誰かが羊の刈った毛を亜麻のように糸にすれば服を織れると気がついたらしい。
そうすれば羊は毎年冬には寒さに対応するために毛をはやしてくれるから、羊を必要以上に殺さなくても良くなったわけだ。
そうした関係上、羊毛に関する技術が一番進んでいたのが中近東であって、羊毛を使ったペルシャ絨毯はその後の歴史でも最高級のものとされていたな。
まあともかく俺は羊毛を糸にしてそれを編む方法をリーリスにも教えた。
「ここはこうやってやるとな……」
「なるほど、色々できるのね。
私もやっていい?」
「おう、もちろんだぜ」
そして二人で編み物をやっていると娘も興味も持ったようだ。
「あちしもやうー」
「いやいや、お前さんにはちょっと早いんじゃないかな?」
娘は目をうるっとさせてもう一度言った。
「あちしもやうー!!」
「ああ、分かった。
じゃあちょっとだけな」
「わーい」
早速編み棒に手を伸ばす娘。
「えーと?んーと?」
「あー、やっぱりお前さんには棒編みまだ難しいからまずは指編みからやってみようか。
俺もそうしたし、俺が一緒にやってやるから」
「あい」
というわけで俺はあぐらをかいて座って、娘を足の上に乗せて後ろから抱きかかえるようにして、娘にに手取り足取り指編みのやり方を教えながら編み物をやらせた
「あらあら、結構上手じゃない」
「そうだな、我が娘ながら器用だと思うぜ」
まあ、そんな感じで各自が農作業や家事などの空いた時間に毛糸での編み物をしていたら少し寒くなってきた。
「よ~しできたー」
「あら私もできたわ」
「あちしもー」
俺とリーリスは娘の防寒のためのものを作った。
俺が二人分のマフラーと帽子、リーリス用の毛糸の腹巻き、リーリスが指付きの手袋に膝丈の靴下とセーター。
うんだいぶ差があるがしょうがない。
それらを身に着けた娘は嬉しそうに笑った。
「ぽかぽかー。
かーしゃ、とーしゃ、あいあとー」
「うん、良かったわね」
「おう、これで今年の冬はバッチリだな」
娘は両手をバンザイして喜んでいる。
「ばっちりー」
娘が喜んでくれて何よりだ。
ウールは革と違って通気性もいいから、かぶれたりあせもなどにもなりにくいんじゃないかな。
ちなみに娘が作ってくれたのはマフラーっぽい何かだ。
「おう、ありがとな」
「本当に有難うね」
「あい、がんばったでしゅ」
本当頑張ったな、まあ、ちょっと長さは足らないけど娘の気持ちと行動に感謝だ。
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