第38話 カラスに子猫が襲われてたから助けたぜ
結局あの後、子供が食べたものをよほど気に入ったらしく作り方を教えてくれと母親がやってきた。
彼女はリーリスが出産した時に乳母として助けてくれていた人でもあったので、俺はシチューもどきやパイ生地肉の包み焼きなんかも合わせて喜んで作り方を教えたが、結局他の母親などからも作り方を教えてほしいとせがまれるようになってしまった。
皮をなめしたものや毛糸で防寒具を作ってマリアに送ったときに似たようなことになったが、まあ最終的には子供が喜んだらしいのでよしとした。
それは置いておいて、人間と関係の深い鳥はツバメだけではない。
カラスもそうで各地の古い神話でカラスは出てくる。
カラスは太陽からの使いとされていることが多く、人類とは馴染みの深い鳥の1つだ。
そしてカラスの食性は雑食性で人間が食べ残した生ゴミをついばんでいることも多い。
21世紀の都市部ではカラスがごみ集積所のゴミ袋を突っついている様子もよく見かけたな。
カラスは本当になんでも食べて昆虫、ネズミや子犬、子猫などの小型の哺乳類、カラスも含めた鳥類の卵や雛、小型の蛇やトカゲなどの爬虫類、カエルなどの両生類、川ガニなどの甲殻類などの動物や植物の果実や種子、動物の糞なども食べる。
そして比較的大型の鳥であるカラスには天敵はほとんど存在しない。
梟や一部の猛禽類、後は蛇くらいか。
そして、今日は家の目の前で真っ白な子猫が二羽のカラスに囲まれていた。
子猫は必死に威嚇して追い払おうとしている。
しかしカラスは頭がよく猫の目を潰してから鷲掴みにして屋根の上に連れ去って食べたりする。
「とーしゃ、みゃーちゃんが!」
それを見て娘が泣きそうになったのは言うまでもない。
「お、おう、かわいそうだし助けるか」
本来、子猫がカラスに襲われているから助けるというのは人間の身勝手ではある。
だが小さな子猫が娘の目の前で襲われてるのを見殺しにするのはやっぱりかわいそうだ。
娘にとっても子猫にとってもな。
「おりゃおりゃおりゃー」
適当に棒切れを振り回してカラスを追い払って、子猫をガシッとつかむと家に連れ込んだ。
「みゃーちゃんだいじょうぶ?」
娘が心配そうに見ているがとりあえず大きな外傷などはないようだ。
「ああ、大丈夫だぞ」
子猫は何が起こったかよくわかっていないのか固まってる。
「もう大丈夫だぞ?」
子猫は相変わらず固まっている。
「だいじょーだじょ」
娘がそういうと猫は鳴いて見せた。
”みゃー”
うん、俺の時は固まっていて、娘にはちゃんと反応するのはひどくないかね。
しかし、助けたのはいいが猫は基本肉食動物で犬と違ってデンプンはほとんど消化できないんだよな。
ご飯に鰹節をかけて味噌汁をかけた”ねこまんま”というのは日本にペットフードがない時代には飼っている犬猫によく与えられてはいたようだが、実際には小さな犬猫には人間の味付けだと塩分が多すぎるし、玉ねぎなどが入っていたりもすることから、そういった状態の犬猫は長生きはできなかったらしい。
「とりあえず魚を柔らかく煮て食べさせるか」
俺は川に猫をだいて連れて行って網で小魚をすくってやることにした。
たぶん母猫が側に居なかったから乳離はしてるだろ。
「ねこしゃーよあったね」
猫に話しかけてる娘は嬉しそうだ。
”みゃー”
子猫も機嫌よく鳴いている。
そして川で小魚を網ですくい上げて小さな壺に入れてやると子猫はその中の小魚をしゃぐしゃぐと食べ始めた。
「以外と図々しいなおまえさん」
俺がそういうと子猫は首を傾げるようにしながら俺を見上げた。
「ああ、畜生、なんとも可愛らしいなお前」
「ねこしゃげんきー」
それを見た娘もバンザイというふうに手を上げて喜んでる。
しかし、なんで子猫というのはこんなに可愛いのだろうか。
まあ、自力で生きてる魚が食えるくらい元気ならこの先もなんとかなりそうだな。
この時代には獣医も居ないしキャットフードもないが、娘のいい遊び相手になってくれればいいのだが。
そして勝手に子猫を飼うことになって、もしかしたらリーリスが怒るんじゃないかとも思ったのだが。
「あら、全然大丈夫よ。
かわいーわね、この子」
そうしてリーリスも子猫にメロメロだったおかげで大丈夫だった。
子猫の首に紐をつけて勝手に家の外に出たり、家畜小屋の真鴨や雁が襲われないようにすることにしたが、寝ている娘と一緒にねている子猫は幸せそうな寝顔を浮かべていた。
ちなみに猫は人間のことを“自分よりも大きな敵意のない猫”だと思っているし、犬は人間のことを”食料を確保してくれる群れの優秀なリーダーの犬”として認識しているらしい。
まあ犬猫は主に視覚ではなく嗅覚で相手を判断するのでそうなるらしいけどな。
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