第22話

夜……夕食を食べ終わった後は、術の特訓なのだがその前に、空が炎月から貰った土産の品々を机の上に広げた。


「わぁ……沢山ありますね」

火織は机に並んだ色んな物を見て、そう呟いた。

野菜に木彫、綺麗な布地や糸……これは、柊水様宛てらしい。布地や糸を包んでいる紙に『柊水へ』と書かれていた。

「可愛らしい鳥の木彫がありますね。そう言えば、炎月様は自身で彫り物を作る趣味がありましたね」

空は手のひらに収まる鳥の木彫を手に取った。どこに飾るか悩んでいる。

「本当に色んな物を持ってきましたね……これは、千代紙ですか」

柊水が手に取ったのは、華やかな柄の千代紙。

「とっても綺麗ですね。これで何か折って屋敷内に飾ったら素敵かも」

火織がそう言うと、空は瞳を輝かせた。

「いいですね!皆で折り紙しましょう!」


3人は折り紙をすることにした。まず作るのは折り鶴だ。


柊水、空はテキパキと折っていく。

火織は……。

「あれ?ぴったりじゃない……ズレてる……」

火織は苦心していた。火織がもたもたしている間に、柊水と空は折り鶴を完成させている。

「……火織さん、折り紙苦手なんですか?」

空がそう聞くと、火織はちょっと口をとがらせた。

「ちょ、ちょっと苦手なだけです」

そう言った瞬間、火織の手元で「ビッ」と嫌な音がした。

「え、嘘……!?」

火織が慌てて見てみれば、紙がちょこっと破けてしまったのだ。

青ざめている火織の手元を覗き込んだ柊水は「大丈夫ですよ」と言った。


「派手に破いたわけじゃないから、大丈夫です火織さん。ここをきちんと折り目を付けてから折れば、問題なく鶴を作れます」

柊水に少し補助をしてもらい、火織は作業を続ける。

そしてついに……


「ちゃんとできた……!」

何とか折り鶴が完成した。しかし……

火織は机に並ぶ柊水と空の折り鶴を見た。

二人のピシッと綺麗な形の折り鶴に比べて火織のは、何だかよれっとしていて、よく見れば顔がやや歪んでいる。

「うぅ……不格好な折り鶴……これは自分の部屋に置こう……」

「火織さんが霊力の炎で作り出すものはどれも精密で完璧なのに、折り紙が苦手だったとは……細かい作業はどれも得意かと思いました」

空がそう言うと、火織は苦笑いをした。

「そんなに細かい作業は得意じゃないですね……どっちかって言うと、裁縫も苦手分野です……」

火織はちょっぴりしょげた。

そんな火織の肩を軽く叩いたのは柊水だ。

「誰しも苦手なことはあります。私は裁縫は得意ですが、霊力を上手く使いこなせてません。そんなに落ち込む必要はありませんよ。……火織さん良かったら、これをどうぞ」

柊水が火織の手に千代紙で折った花を乗せた。

折り鶴を作り終えた柊水が何やら他の物を作り始めていたのを知っていたが、何を作っているのか火織は知らなかった。

「すごい……!ありがとうございます、柊水様。これ、大事にしますね!」

火織が嬉しそうに言うと、柊水も嬉しそうな顔をした。

「火織さん、一つお願いがあるのですが……」

柊水は火織が折った折り鶴を指差す。

「その折り鶴、頂けませんか?」

「え、でも……すごく不格好ですよ?」

「愛嬌があって素敵だと、私は思いますよ」

柊水にそう言われ、思わず自分が折った鶴を見る火織。

(愛嬌……確かに顔の部分の斜めった感じが、ちょっと可愛い……ような気もするけど……)

しかし、不格好であることには変わりがない。

「その、こんな折り鶴で良ければ……どうぞ」

火織が渡すと、柊水はそっと貴重品でも触るかの様に折り鶴を手に取った。

「この折り鶴、大事にしますね」

「あ、あの柊水様!今度はもっと綺麗な折り鶴を作ってそれを渡します!」

火織がそう言うと、柊水はふわっと笑った。

「楽しみに待ってます」



それから火織は、折り鶴の練習をするようになった……。

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