第12話
湯飲みから溢れていた水が止まる。
「柊水様、雨が降り続ける原因……焦りの気持ちと、霊力の使いすぎです。きっと」
「霊力の使いすぎ……ですか?」
火織は頷く。
「はい。柊水様は、とても真面目な方だから、頑張らなくては~って意識しすぎて自身でも気づかない内に、霊力をかなり使っているのです。雨を止めようと思っても、知らずに霊力を垂れ流しにしていて、雨が止まないのかもしれません」
火織がそう言うと、柊水は「なるほど」と呟いた。
「柊水様、火織さん、この手拭いをお使いくださいっ!今すぐ替えの着物を持って来ます!」
空が慌てて両手いっぱいに手拭いを持ってきた。
床も水浸しでひどいが、柊水と火織の着物も水をかなり吸っていた。
そこではたと、火織は柊水の手を握りしめたままのことに気づく。
「ご、ごめんなさい柊水様!いつまでも手を握ったりしていて……!」
しかし、柊水は優しく微笑み、空が持ってきた手拭いを手に取り、水で濡れた火織の両手を拭いた。
「火織さん、ありがとうございます。焦らなくて大丈夫だと言ってくれて。本当に助かりました」
柊水のその言葉を聞いて、火織は身体中がぽわぽわと温かくなっていった。
「お役に立てたなら、良かったです……!」
2人は、空に用意してもらった着物に着替え、その後は3人ですっかり水浸しになった部屋を掃除した。
掃除が終わった後は、3人でまったりとお茶を飲んだ。
「そうだ、柊水様。柊水様が良ければなんですが……今後夕飯を食べた後に、霊力を使いすぎないように術を使う練習……しませんか?私、里にいた頃、人に術の使い方を教えてたことがあるので、お役に立てるかもと思って」
火織がそう提案すれば、柊水は「いいんですか?」と言う。
「もちろんです!雨が降り続ける原因を探すと宣言したのですから、やれることは全力でやりたいんです……!」
火織の紅色の瞳はやる気で満ちていた。
早朝の空と一緒に屋敷付近の邪の者探しは続けている。
最近は、見つけたとしても鼠や小鳥の姿をした小さな邪の者だった。
しかし今日は……
「火織さんっ!気をつけて!!」
空の声でハッとする火織。
バサッと火織の横を何かが凄い速さで飛んでいく。
「キィエエエ!!」
耳障りな叫び声が辺りに響き、火織と空は顔を歪める。
空が作り出した青い炎で、木々に隠れる者の姿を照らし出した。
そこにいたのは、鳥の姿をした黒いもの。
「邪の者……」
火織がそう呟く。
「あれは、鷹の姿をしていますね。最近は小型の邪の者ばかりでしたが……今日は珍しく中型ですね」
空の言葉に火織は頷いた。
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