第36話 俺が養子になる前の姓だが...
寝起きは最悪だったが、ぐっすり眠れたしまあ良しとしよう。
「おい、レイ、クララ、いい加減起きて俺から離れろ。」
「私はすでに起きてる。」
なるほど、なーんだ、それなら良かった。
..........
「いや、それならしがみつくのやめてもらえるか?」
「ん~っ、ほえ?もう朝ですか。今までずっと眠って過ごしていたので、朝起きるというのは慣れませんね。」
こいつら.....
先が思いやられるな。
「今日はクララの件をボスに伝えに行く。レイはともかくクララは寝ぼけてないで支度をしろ。」
「んん~、ん?申し訳ありません!すぐに準備します!」
ドラゴンが朝に弱いなんていう意外な弱点があるとはだれも思わないだろうなぁ。
ポンポン
「ん?何だレイ?」
「私も行く。」
「今日も仕事なのか?大変だな。」
「違う。アレスとその龍だけだと心配だからついていく。」
なんだろう、レイには信頼されてると思っていたのに....
やるせないぜ...
「レイさん、あなたまさか私とアレス様が二人きりで行くのが不安なんですか?ただの人間というのは感情のコントロールもできないのですね。可哀想に(笑)」
「アレス、コイツを置いて二人で行こう。」
「いや、本人居なきゃダメだろ?まあ、別にレイが来ても不都合はないしな、暇なんだったら一緒に行くか。」
「うん。」
「まあ、アレス様が言うなら私は構いませんが...。」
やり取りを終え、俺達は組織のアジトへと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いいか、今からボスに報告するわけだが....。」
「アレス様がボスと慕う存在....興味あります。」
「基本的に俺が説明するからお前は余計なことを言うなよ?」
「分かりました。」
コンコン
「俺だ。」
「アレスか、入れ。」
「突然すまないな。ちょっと報告しておくことがあってな。」
「それはお前の後ろにいる者に関係があることか?」
「ああ、こいつはクララと言ってな、話すと長くなるんだが...。」
「構わない。」
俺はクララとの出会いと、クララが上位種のドラゴンであることを話した。
「なるほどな....そんなことがあったとは。このことを勇者たちは知っているのか?」
「いや、知らないはずだ。」
知らない....はずだ。
「ふむ....しかしドラゴンとなると扱いが難しいな、どうしたものか....。」
「そのことなんだが、一緒に暮らしながら、俺の仕事を手伝わせようと思っている。」
やっぱ楽したいし?
それになんかあれば最悪、ドラゴンっていうフレーズの威厳を借りれるしな。
「しかしなあ、(ドラゴンと)一つ屋根の下で暮らすのは流石にマズくないか?」
おいおい、ドラゴン相手に欲情すると思われてるのかよ...心外だぞ。
「そんな(欲情する)ことは起こらないから大丈夫だ。」
「....そうか。まあ、お前を信じよう。ところで、レイからあの件は聞いているか?」
「あの件?なんのことだ?特に何も聞いてないぞ。」
「実は最近怪しい教団が暗躍していると聞いてな。レイには昨日その調査をしてもらったんだ。」
あー、昨日の仕事ってそれか。
「怪しい教団ねぇ....どんなことをしてるんだ?」
「チェルゲティの頭、フジュム=チェルゲティを覚えているか?」
なんかいたなあ、そんな奴。
「確か、奴隷売買をしていたっていう...。」
「ああ、そいつを裏で操っていたのがその教団だ。」
フジュムはただの賊じゃなかったってことか。
ここで一つ疑問が浮かぶ。
「なぜ教団は奴隷売買をさせていたんだ?」
「奴隷売買というより、自分たちで買い取っていたという方が正しいな。なんでも、幼い子供たちの血を採取するためだとか。」
「なんでそんなことを?」
「残念だがそれはまだわかっていない。だが、その教団は邪神エデルと呼ばれる神を信仰しているらしい。それと何か関係があるのかもしれない。」
んー、邪神エデル....
聞いたことがあるような....
「クララは何か知ってたりしないか?龍ってことは長生きしてるんだろ?」
「聞いたことがあります。昔、邪神復活を企むものがいて、その儀式に若い者の血が使われたとか。そして邪神は復活してしまい、人間界だけでなく、魔界、精霊界をその邪悪な力で包み込み、崩壊させようとしたのだとか。神々はそれを脅威とみなし、下界に賢者なるものを送り、その者に邪神封印を託しました。そしてその賢者、ヴェリウス=ブレイブにより、無事邪神は封印されたと。」
「そんなことが....となると教団の目的は邪神の復活か。」
「邪神の復活....。」
邪神復活とか物騒だなおい。
しかし、ブレイブ?俺が養子になる前の姓だが....
まあ、偶然だろうな。
「元々は国王から国の脅威になるようであれば対処してほしいとの依頼だったが、これは組織としても見過ごせないな。」
ボスの言うとおりだ。
邪神が本当にいるなら俺の自由気ままな生活が脅かされる可能性がある。
これは一大事だ。
「教団の居場所は?」
「既にレイが調べてくれた。地図によるとここ、ファニュレル聖堂の地下に潜んでいるらしい。」
「レイ、他に何かわかったことはないか?」
「教団の名前はソシリス。表向きは教会に従いながら活動しているけど、裏で暗躍している。でも全員が黒ってわけじゃないみたい。大体3割くらいがそう。」
なるほど。
まともな奴もいるのか。
「区別の方法はないのか?」
「確実とは言えないけど、地下にいた人たちは紫のネックレスをつけていた。たぶんそれが証。」
.....やるなら今夜か。
俺がボスに視線を送ると、ボスは静かに頷く。
「アレス、レイ、そしてクララ、始末しろ。決行は今夜だ。」
「ああ。」
「分かった。」
『ぐぅ~』
音の方を見るとクララが照れながら、
「いやあ、私お腹すきました。夜に備えて何か食べたいです。」
こりゃあ初仕事の心配はなさそうだな。
「レイ、俺達も飯にするか!」
俺達は夜に備え、飯屋へと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【勇者パーティー】
「ここでご飯食べてれば会うかもしれないと思ったんだけど....。」
「アレスさんチョベリバーグ好きでしたものね。」
「まあ、またどこかで会えるさ。私たちは依頼をこなしながら鍛錬に励もう。アレス君が帰ってきたときに失望されないように。」
「そうですね!」
「もちろんよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アレス『グラグラグラタン....美味くはあるが....なんでこの街は不安になる食べ物が多いんだ?』
レイ『アレスと一緒だと美味しい。』
クララ『モグモグモグ、おいひいです!』
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