第35話 と、思っていた時が俺にも....
~ギルドにて~
「すまない、依頼の調査結果の報告をしに来たのだが。」
「勇者パーティーの皆さん!お疲れ様です。」
「結論から言うと正体不明の魔物はポイズンコブラね。ついでだから倒しておいたわ。これがその牙よ。」
「なるほど...そんな魔物が....。」
「結局、アレスさんとは会いませんでしたね。行き違いでしょうか?」
「しかしアレス君ならポイズンコブラ程度倒していてもおかしくはないんじゃないか?」
「まさか、あたしたちが来たから隠れてたとか?」
「そのことなんですが実は....。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「アレス様、これからどうするのですか?」
「とりあえず俺の隠れ家に行く。」
クララの服を買い終えて、俺達は隠れ家へと向かっていた。
さて、レイにはなんて説明したものか....
組織にも隠してはいられないだろうし。
明日あたりボスに伝えに行くか。
隠れ家に着くと、レイはすでに帰ってきていた。
「アレス、どこに行って....誰?」
「ああ、まあちょっと色々あってな。上位種のドラゴンのクララだ。今日からコイツもここで暮らしてもらう。」
知らないとこで寝泊まりされて問題起こされたら困るしな。
「ドラゴン....聞いたことがある。確か自分より強い者に興味を示し、しばらく行動を共にして、いずれ番いとなることで生涯を共にしようとする種族。」
なるほど、番いねぇ....
ん?
「私とアレス様が番い....なるほど!考えもしませんでしたが、龍種としては強い子孫を残すことも大切....いいですね!」
「おい、レイ。要らん事言ってくれたな。おかげで面倒なことになったぞ。」
「大丈夫、私がいるからその龍はアレスの番いにはなれない。」
頼もしい....のか?
「一応聞いておくが、お前がクララを説得してくれるから、その心配はないってことだよな?」
「....そんな感じ。」
何だ今の間は。
何らかの作為を感じるぞ....
「まあ、なんだ、クララ、お前も同じ歳?くらいの女の子との接し方をこれを機に会得してもらってだな。」
「しかしアレス様、この人間は私より強いのですか?自分より弱い者と戯れるのは少々....。」
まあ、こうなるよな.....。
どうしたものかねぇ。
「私はあなたよりも前からここに住んでるし、アレスの事もよく知ってる。」
「なるほど....となるとまさか、アレス様の奥方!?失礼な態度をとってしまいすみませんでした!」
「うん、違うね。友達ね。」
どう勘違いしたらそうなるんだよ。
「しかし、アレス様の偉大さを認知していながら、そばで支えているお方が既にいらっしゃったとは....流石アレス様のお友達。その力、認めましょう。」
「ただの脳筋龍かとおもったけど、見る目がある。私の次にアレスと仲良くすることを許してもいい。」
なんかよくわからんがまあ仲良くしてくれるならそれでいいか。
.....と、思っていた時が俺にもありましたわ。
「邪龍、あなたは床で寝るべき。アレスの隣は私のもの。」
「邪龍ではありません!私にはアレス様から頂いたクララという名前があります!人間のあなたこそ床で寝るべきではないですか?」
「アレスも人間だけど。」
「アレス様は特別です!」
「んじゃあ、もう俺が床で寝るからお前らでベッドを使ってくれ。」
「なら私も床で寝る。邪龍、ベッドで好きに寝るといい。」
「クララです!名前を覚えることすらできない小さい脳みそでよく今までアレス様のお友達が務まりましたね?そのような知力ではいざという時アレス様を守れません。私が床でアレス様と寝ます!」
「疲れてるから早く寝たいんだが。」
「あなたのせいでアレスが迷惑してる。いい加減諦めて。」
「あなたのせいです!私じゃありません!....え?違いますよね?アレス様?」
まあ、正直どっちもだが....
「あ、そうだ!私なら尻尾を出して疲れているアレスさんを快眠させることができます。あなたには....おっとすみません。尻尾ありませんでしたね(笑)」
「別に尻尾なくても問題ない。私はアレスの抱き枕。」
どの口が言うんだそれは。
朝起きるといつもお前が俺をホールドしてる気がするんだが....
「抱き枕?それなら私にもできますよ?」
「無理、私にしか務まらない。」
..............
若干の沈黙が訪れる。
「やりますか?」
「容赦しない。」
「ちょっと待て!そこまでだ。」
「.....何?」
「アレス様、止めないでください!このメスにわからせる必要があります!」
正直これは避けたかったがやむ負えまい。
「幸い大きめのベッドだ。3人で寝よう。これ以上の争いをするならどっちも出て行ってもらう。」
「.....仕方ない。」
「わかりました....。」
ようやく俺はベッドに横になる。
あー疲れた。
案の定俺の左右にレイとクララが横になる。
若干暑苦しいが仕方ない。
俺はそっと瞼を閉じた。
朝起きて俺が二人にホールドされていたのは言うまでもない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~しばらく時間は遡り~
「なるほど、彼は西に行ったのか。」
「はい、そして....あっ、これは秘密でした。」
「なによ?勇者パーティーのあたしたちにも言えないことなの?」
「アレスさんに関係することなら教えて欲しいのですが...。」
「....絶対に他言しないと約束してもらえるのでしたら。」
「勇者として、いや、セリス=アルスバーンとして誓おう。」
「わかりました。彼は西に向かった後、ドラゴンを連れて帰ってきたのです。」
「ドラゴン!?」
「アリサ、声が大きいですよ。」
「でも、ドラゴンて....。」
「街にそんなものが....。」
「大丈夫です。人間の姿をしていましたし、アレスさんの管理下にあるので問題はないかと。」
「そうか、情報提供感謝する。」
「ところでなぜ、勇者パーティーの皆様とアレスさんは別々で行動しているのですか?」
「実は数日前からアレスさんはわたくし達の前から姿を消してしまいまして。」
「昨日ようやく見つけたと思ったら逃げられたのよね。」
「そうだったんですか...。ですがなぜ?」
「私達にもわからない。だから本人から話を聞きたくてな。」
「今日のようにアレスさんがギルドに顔を出したら教えていただきたいのです。」
「ちょっとしたことでも教えて欲しいわ。」
「そういうことなら、わかりました。」
こうして、アレスの知らないところで情報共有の約束が締結された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
レイ『アレスは渡さない...。』
クララ『私とアレス様が番い....。』
アレス『ZZZzzz』
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