第34話 しかし地図を見ると...

「いやまあ、気配からそんな感じはしてたけどさあ.....。」


なんでこんなところにドラゴンがいるわけ?

久しぶりに見たぞ。

俺がじっと見ていると...


『何者かと思えば人間か。私の眠りを妨げるとは恐れ知らずにも程がある。』


立派な角だなぁ。

そういや龍の角って高く売れるんだっけ。


『聞いているのか!』


「ん?ああ、俺に言ってるのか。すまん、考え事してた。」


『私を前にして考え事とはなかなか威勢がいいな。』


「実はギルドから依頼があってな。正体不明の魔物を調査しろってことできたんだが...まさか魔物じゃなくてドラゴンだとはなぁ。」


『気に食わんな。その威勢、いつまでもつか試してやろう。』


ファオオオン!


うるっさ!

びっくりしたわぁ。


「お前なぁ、普通にうっさいんだが。脳に響くから勘弁してくれ。」


『私の咆哮を聞いて逃げないか。面白い、ならばこちらも実力行使といこう。』


「いやまあ待てって、俺としてもドラゴンなんかと戦いたくないぞ。ここは穏便に話し合いでだな....。」


『問答無用!』


「あっぶな!」


尻尾で薙ぎ払おうとしてくるのを翻す。


『避けるか。威勢がいいだけではないようだな。ではこれならどうだ?』


ゴォォォォ!


ドラゴンが勢いよくブレスを吐く。

俺はとっさにブーヴィーでそれを切る。


ヒュン!


「お前がその気ならこっちも容赦しないぞ。お前の角、我が生活の糧にさせてもらう!」


俺は殺気を放ちながら構えの姿勢をとる。

ドラゴンが大きく動く。

さあさあ次はどう来る?


ドォン!


『すみませんでしたぁ!』


.......え?


「何してるのお前?」


『私じゃあなたには勝てない....負けを認めますのでどうかご慈悲を!』


「え?....えっ?」


『先ほどの殺気、あれはもうヤバいとかのレベルじゃないよぉ....。』


「いやお前、口調...。」


『威勢だけがいいのは私の方でしたぁ!許してぇ!』


いや、こいつマジか。

手のひら返すの早くね?


「でも角欲しいしなぁ。」


『それだけはご勘弁を!』


あ、聞こえてた?

思ったことが口に出ちまってたか。


「じゃあ、俺の話を聞いてくれるか?」


『もちろんでございます!』


「さっきも言ったがこの辺に正体不明の魔物がいるらしくてな。それがお前。」


『私?....しかし私が最近人と会ったのはあなたが初めてでして....殺気を放ったのも....。』


「ん?」


『え?』


あれぇ?


「しかし地図を見ると確かにジュレイン遺跡と書いてあってだな。」


『恐れ多くもここはジュレイン遺跡ではなく、ただの私の寝どころなのですが....。』


東のジュレイン洞窟って書いてあるしな。

あれ、待って、東?


「ここって東?」


『西ですね。』


西....え、ホントに?

え?無駄足ふんだってこと?

うわー、マジかぁー


「なあ。」


『はひ!?何でございましょうか!』


「なんだろう、とりあえずなんかすまん。」


『え?』


「勘違いしてたみたいだわ、俺。」


『.....え?』


「まあなんだ、お前も手を出してきたし、ここはどっちも悪かったということで。」


『まさか見逃してくれるんですか!?』


「いや、見逃すも何も別にお前に用ないし俺。」


『....なるほどそうですか。』


「そうそう、そういうこと。」


『決めました!』


「ん?決めた?何を?」


『私はあなた様についていきます!』


「へぇー俺にねぇ....え?なんで?」


『それだけの強さをもちながら奢らず、尚且つ寛大な心を持つ、こんな素晴らしい方がいるでしょうか!そう、いるんです、目の前に!』


「.....、ここで眠っといた方が良くない?」


『身体もなまっていましたし、丁度いい機会です!』


「いやでもほら、街歩くとき邪魔だし。」


『その言葉、待ってました!』


待ってたって何?

まさかこいつ...


ヒュウウウウン


「これでどうですか?」


どうって.....

案の定人型になったんだが?


「てかお前メスだったのかよ!?」


思わず目をそらす。


「何か問題が?」


「馬鹿野郎、問題しかねえよ!」


えーと、何か収納してなかったかなぁ...

......あ、俺のオーダーメイドの服があったな。

入るか?色々と。いや、でもこれしかないわ。


「これを着てくれ。扉の外で待ってるから、着たら出て来いよ。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・



待つこと十数分。


「これで合ってるでしょうか?」


クルクルと回りながら聞いてくる。


「どれどれ....問題ない。」


「ありがとうございます!ところでご主人さまの名前は....。」


「アレスだ。アレス=エングラム。一応言っておくが名前で呼べよ?ご主人様は色々とややこしい事が起きる。」


「わかりました!アレス様!」


様って.....まあそれくらいはいいか。


「で?お前名前は?身体自由に変えられるってことは上位種なんだろ?」


「はい!私はクルゥーラと申します!」


クルゥーラねぇ....

なんか魔族の名前と言い、呼びづらいやつ多いな。

クルゥーラ....クラーラ....


「よし、お前のことはクララと呼ぶ。これからよろしくな。」


「私を連れて行ってくれるんですね!ありがとうございます!」


うん、まあ、この手のやつは断ってもついてくるだろうし、それに俺の知らないところで何かされたら困るからな。


「んじゃ、とりあえず街でお前の服を買うぞ。」


「わかりました。」


ギルドに報告....はしなくてもいいか別に。

いや、しとくべきだよな....。

とりあえずクララのことは隠して依頼失敗ということで報告はするか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「というわけで、依頼は失敗だ。すまないな。間違って西に行ってしまったんだ。」


「なるほど....西にですか。まさかとは思いますがドラゴンに会ったりしませんでしたか?」


「いんやあ?全く。」


「その角が生えた女の子は....。」


あ、角隠すの忘れてたわ。


「上位種のドラゴン、クララだ。」


バカ野郎!要らんこと言うな!

はぁ、仕方がない。


「まあ、そういうことだ。」


「まさかドラゴンを従えて帰ってくるなんて....しかも上位種.....。」


「すまないがこのことは秘密で頼む。」


「.....そうですね、それがいいでしょう。」


「ああ、そうだ、勇者パーティーには俺から直接言っておくから、くれぐれもあいつらには何も言うなよ?」


「は、はい。」


さてと、予防線はったしとりま服買いに行くか。


「クララ、行くぞ。」


「はい!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



【ギルドにて】


「ギルマス、大変です。」


「どうせアレスの事だろ?何があった?」


「それが....依頼失敗との報告を受けたのですが、上位種のドラゴンの女の子を連れて帰ってきまして....。」


「はぁ!?何ということだ....。いいか、分かっているとは思うがこの件は秘密にする。」


「はい、アレスさんもそのように言っておりました。」


「彼はドラゴン以上の実力ということか。頭が痛い。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




アレス『角隠すには....帽子か?』



クララ『アレス様、見てくださいこの服!』

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