第33話 気分はさながら鳥といったところか。

「ふぁぁぁっ。」


今日はやけに身体が軽いな。

ん?レイの姿が見当たらない。

起きた俺は枕元に何かあるのに気づく。


『組織の仕事』


置かれていたメモを見て俺は納得する。

なるほど、仕事かあ。

俺は特に連絡きてないし...

待てよ?じゃあ久しぶりに俺今日一人じゃね?


......


ヤッター!自由だぁ!

と言っても何するか...

いざ一人だと特にやることがないな。

うーむ、たまにはギルドの仕事でもしに行くか。

まあ変装してるしバレないだろ、知らんけど。

そうと決まれば早速支度してレッツゴー!



・・・・・・・・・・・・・・・



「来たのはいいが、いい依頼がないな。」


掲示板とにらめっこすること十数分。

俺は未だに依頼を決めれずにいた。


『これは流石に勇者パーティーにお願いした方がいいのでは?』


『しかし最近何やら忙しいようですし....。』


ん?なんか不穏なワードが聞こえたな。

てかよくよく考えると、あいつらもここに来てもおかしくはないよな。

ここは早急に依頼を決めた方がいいか。

俺は掲示板から離れて受付嬢のもとへ向かう。


「すまない、掲示板を見ていたんだがパッとする依頼がなくてな。できれば俺に丁度いい依頼を紹介してほしいんだが。」


「はい、依頼の紹介ですね。では冒険者カードを見せてもらえますか?」


「ああ、これだ。」


俺は前に勇者パーティーたちと作ったカードを取り出して提示する。


「っ!?まさか【紅】のアレ....」


「シーッ!あまり大きな声で呼ぶな。色々と面倒なことになる。」


今ここで名前を出されるのはマズい。

勇者パーティーに知られたくないし。


「し、失礼しました。しかしあなたに紹介できる依頼となると....そうだ、さっきちょうど勇者パーティーに紹介しようと思っていた依頼がありまして、そちらはいかがでしょうか?確か勇者パーティーの一員でしたよね?」


抜けました!なんて言えない....

いや待てよ?ここで俺が勇者パーティー用の依頼を受ける。

それすなわち勇者パーティーがここに来る理由がなくなるというわけだ。

これ、いけるか?


「それで頼む。」


「わかりました。こちらが依頼内容になります。」


どれどれ....正体不明の魔物の調査か。

確かに勇者パーティー向けではあるな。


「....一応聞くけど、俺の冒険者カードのランクを見て判断したんだよな?」


「もちろんです。この依頼は最低でもAランクでないと厳しいでしょう。」


Aランクねぇ....あれ?俺確かランク無しの落ちこぼれ....

うん、なるほど、理解したぞ。


「つまりはそういうことか。」


「はい、勇者パーティーは忙しいと聞いておりまして、そこであなたにと。」


勇者パーティーのメンバーの代わりに捨て駒になれと....

うん、切ない。

別にいいし、絶対に生きて帰るし。

えーと、報酬は100万ゼピスか....ん?100万?


「調査だけでいいんだよな?」


「はい、今回は調査だけで大丈夫です。」


よし、言質とった。


「それじゃ、行ってくる。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・



【アレスが居なくなった後】


「彼は行ったか。」


「ギルマス!」


「今回の依頼、かなり危ないと聞いているが...まあ彼に任せれば大丈夫だろう。」


「そうですね...。しかし、周りの冒険者が委縮しないように自分の名前を言うのを避けたり、Aランクでも数人はいないと危ないといわれているこの調査にも一人で行くとは....本当にすごい方です。」


「この国で彼を超える者はいないだろうな。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ヘックシ!」


誰だぁ、俺の噂してる奴は?

心当たりしかないぞ、全く。


ギルドで依頼を受けた俺は、森を抜け、ジュレイン遺跡に向かっていた。

地図通りだとひたすら西に進めばいいみたいなんだが....


「ここか。」


大きな古い建造物の前には、広い湖が広がっている。

これを渡るためには....


「『フライト』」


俺は水面の上を飛行魔法で駆け抜ける。

しっかし風が気持ちいいぜ。

気分はさながら鳥といったところか。

おや?岸が見えてきた...もう少し飛んでいたかったが仕方ない。

湖を渡り終え、俺は遺跡の中へと入る。


「随分古いな....それにこの重たい空気....。」


違和感しかねえわ、うん。

俺は正面にあるでかい扉に向かって歩く。

すると、まるで俺を威嚇するかのような殺気を扉の奥から感じる。

間違いないな、正体不明の魔物ってのはこいつの事だ。

しかしこの気配は....


ギイィィッ


俺は扉を開けて中へと入った。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



一方その頃....


「すまない、私たちに依頼したいことがあると聞いてきたんだが。」


「勇者パーティーの皆さん!」


「正体不明の魔物の調査と聞いていますが。」


「そのことなのですが....。」


「どうかしたの?」


「実はアレスさんが来て、依頼を受けていきまして....。」


「彼がここに来たのか!?」


「はい、数十分前に。」


「セリス、今から行けば間に合うかもしれません!」


「そうだな、二人とも行こう。」


「絶対に連れて帰るんだから!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



アレス『てか調査ってどこまですればいいんだ?』




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