第6話出っ歯塾

僕は、小学生の頃から、そろばんや習字を習っていた。そろばんを手に、「あなた〜の名前、なんて〜の?」とか、ふざけていた時代だ。

中学生になると、弓道を始めた。しかし、学校の勉強は難しい。

友達の紹介で、学習塾に入った。通称、「出っ歯塾」。先生が出っ歯なのだ。

だが、この先生のお蔭で学力が付いたのだから、馬鹿にしてはいけない。

だが、中学生は面白い大人のモノマネをするもの。

僕は学校で、

「ゆえに〜、よって〜、だから〜」 

と、前歯を剥き出しにして先生のモノマネをした。

学校の勉強をしたい者は、皆、出っ歯塾に入った。

そして、学力を上げた。

しかし、高校受験、3ヶ月前に不良どもが入塾してきた。

彼らは、教科書も筆箱も持って来ない。先生は、キレた!

そいつら、軒並み高校受験は失敗した。

中学3年間遊んできて、3ヶ月前に勉強しても高校受験は甘く無い。

僕は心の中で、馬鹿だと思った。

あれから、30年。

先生はまだ、お元気であろうか?

同級生のしゅんも、たまに出っ歯先生の話しをする。

今の僕があるのも、出っ歯先生が僕を表舞台に出してくれたからだ。

勉強の仕方を教えてくれて、大学まで苦しむ事は無かった。

しかし、病気になった今、一番出っ歯先生の言葉を思い出す。

「諦めるな!」

と。

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