第7話
カストールは執務室にて考えていた。
あの者たちは一体何者なのか、と。
あの者たちとは勿論、氷の力を操る少年と、見た目幼女のことである。
少年の方は戦力としては超一級品。ただ、
その少年以上に気になっているのが、もう一人の幼女。
うっかり見た目に騙されそうになるが、覗き込んだ瞳の奥はどこまでも深く、底を見通せずにいた。何より自分を前にして、あの物怖じしない胆力は決して並みの子供ではない。もしかしたら、自分より歳を重ねているのではないかとすら錯覚させる。
少年との関係も明らかに幼女の方が上で、少年は彼女の指図で行動していた。
カストールは立場上、過去に様々な肩書きを持つ人間と関わってきたが、これほどまで人となりが見抜けぬ輩は初めてだった。
(全く得体の知れないな)
カストールがそんな感想を浮かべた時、入り口からノックの音がした。
「入れ」
そう告げれば、一人の兵が入室する。
確か、別れを告げた涼介とノイノイの後を追わせた者だ。
それにしては左程時は経っていない。やけに帰りが早いなと思う。
カストールの判断は正しく、そして兵もどこか動揺を隠せてない。
「どうした」
そう問えば、兵は狼狽えながらも報告を始める。
「は、はい。申し訳ありません。見失いました」
「撒かれたのか?」
「いえ。あるいは見通しの良い街道故、もしかしたらこちらの追跡には気付いていたかもしれませんが、足早になるでなく、こちらを気にする素振りもなくでした。ただ街道を外れ、樹木の陰に入った途端、もう姿が見えなくなりまして。他に隠れるような場所もなく、音もなく一瞬で姿を消したとしか。私にも何が何だかといった具合で……」
兵は失態の自覚があるのだろう。尻すぼみに声が小さくなっている。
だが、カストールは知っている。彼が非常に真面目であることを。
職務怠慢は勿論だが、虚偽の報告する人物ではない。となれば、彼の言葉の通り二人は消えてしまったのだ。
(一体、何者なのだ?)
カストールは兵を下がらせると、もう一度自問する。
ノイノイは去り際、我々が社会活動を継続することが望みだと言っていた。
そういえば、今回の山羊獣人騒動を企てた輩も、起こすこと自体に意味があったとのこと。
果たしてそこにどんな利があるというのか。見返りを求めないその姿に、為政者としてどうしようもない違和感を覚える。
そんな折、ふと脳裏を掠めたのは「神」という存在だった。
神々ならば、一人で戦局を変えられるほどの戦士を従えているのも納得出来る。
神々ならば、獣人風情の在り方を作り変えてしまうのも理解出来る。
(もしや、この世界を創生した神と、破壊を目論む神とのイザコザに巻き込まれたのか?)
しかしその後、『
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