「アンケート」


『我が社の商品に関して。一部の人を批判している、として、発売中止にしてほしいというご意見がありました。これを受け、フォロワーのみなさまに、この意見が適しているのかどうか、アンケートを取りたいと思います。

(お相手のお名前は伏せさせていただきます)電話番号「0B0-1125-9866」様から頂いたご意見です』



解答1:中止にした方がいい


解答2:中止にしなくてもいい



「――例の商品、無事に発売できて良かったですね。発売中止を求める電話が多かったじゃないですか……あれ、どうやって納得させたんですか?」


「SNSでアンケートを取ったんだよ。結果、ユーザーの多くが中止にするべきではない、って答えてくれてな……確か、中止に賛成が『6%』くらいだったかな……。あとのユーザーは中止にするべきではないって意見だった。あのアンケートの結果が出てから、発売中止を求める電話もすっかりなくなったんだよ……、アンケートを見て納得してくれたのかもしれないね」


「違うでしょ」


「あ、部長……違うって、なにがですか?」


「あなた、クレームを入れてきた相手の名前を伏せてるつもりでしょうけど、電話番号をそのまま載せてるじゃない……。イタズラ電話の的にでもされて、疲弊したんじゃない? 番号を乗せた私たちに文句も言えないほど、疲弊して……――番号を変えたのはいいけど、また文句の電話を入れて番号を晒されたらかなわないから……もう関わることをやめたとか……」


「へえ……、そうだったんですね」

「いや、確証はないけどね。そうかもしれない、と思っただけよ」

「でも実際に、電話はこなくなっていますから、効果はあったのでしょう……」


「白々しい……あなた、分かってて晒したでしょ?」

「俺は『良い意見』だと思ったので、意見と人物が結び付けられるようにしただけです……、相手を追い詰めようと思ってしたわけではないですよ? 悪気はありません」

「これが素だから、怖いのよねえ……」


「理不尽な意見も『立派な意見』です。それを誰が言ったのか分からないようにするシステムは、もったいなくないですか? 賛同する者が多ければ、発言者が褒められるべきです……、栄誉を貰うべきなんですよ。まあ、賛同を得られなかった場合は、ネットのおもちゃにされたり人格を否定されたりしますが……、しかしそういう思想こそ、革命前夜ですよ」


 ―― ――



「荒唐無稽にこそ、想像できない未来が眠っていますから」



 …了

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