新作・1ラリー物語「世界の車内から」




「年寄りが目の前で立っているのよ? 席を譲ったらどうなの?」




「なら最低限、声をかけてくれ……。敬語でなくともお願いくらいはできるだろ? あなたは、見た目が若く見えるから、実年齢までは分からないし、譲ったら譲ったで、『年寄りじゃない』って怒られるかもしれないんだから、こっちも躊躇するよ。――気持ちを察してくれは無理。赤の他人の気持ちなんて分からないっての。おれは超能力者じゃないんだよ」

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