番外編 出会い(瑠花)
「イヤーーーーーッ!!」
皆様ご機嫌よう、瑠花ですわ。
急に叫んでしまってごめんなさい。
いきなりですけれど、私は1週間後に百合ケ丘学園に入学するんですの。
先程までそのための準備をしていたのだけど、大変なことに気づいてしまったの。
「瑠花?大丈夫?叫び声が聞こえたけどどうかしたの?」
「お、お母様ぁ〜」
瑠花は自分を心配して来てくれた母親に勢いよく抱きついた。
「わっ!もう、どうしたの?いきなり抱きついたら危ないでしょう」
「うぅ〜、実は、制服の採寸に行くのを忘れていたんですの〜」
そう、瑠花は学園への入学が1週間後であるにもかかわらず自分が制服を持っていないことに気づいてしまったのである。
「あら、それは大変ね。確か、ここから1番近い洋服屋は市場にある噴水の先の階段を上ったところにあったはずよ」
「私、急いで行ってきますわ!」
「今から行ってくるの?」
「はい!!」
「そう、走って転ばないように、気を付けて行ってきてね」
「ええ!行ってきますわ!」
そうして瑠花はものすごいスピードで洋服屋に向かったのだ。
(あっ噴水が見えましたわ!あそこにある階段を上ればお店が見えてくるはずですわね!)
カランカラン
「いらっしゃいませ〜」
お店に入った瑠花を優しそうなおばあさんが出迎えてくれた。
「あ、あの、制服の採寸をお願いしたくて、はぁ、その、百合ケ丘学園なのですけど大丈夫でしょうか」
家からここまで走ってきた瑠花は肩で息をしながらそう聞いた。
「あらあら、そこに座って少し休みなさいな」
そう言っておばあさんは瑠花にコップに入れた水を持ってきてくれた。
瑠花は渡された水を一気に飲み干し、しばらくすると息切れも治まってきた。
「あなた、もしかして黒崎瑠花ちゃんかしら?」
「ええ、そうですけど、どうしてわかったんですの?」
「制服の採寸なんて、もうあなたしか残っていなかったのよ。予約してたのになかなか来ないから心配してたのよ。それじゃあ早速採寸始めましょうね〜」
「ありがとうございます、ですわ」
その後なんだかんだで無事採寸は終わった。
「本当に、本当にありがとうございました、ですわ!」
「いいのよ〜、間に合ってよかったわ〜」
瑠花はおばあさんにお礼を言い、店を後にした。
(ウフフ、本当に良かったですわ〜間に合って)
瑠花はかなり舞い上がっていた。それも、スキップしながら若干鼻歌を歌うほどに。
階段の上でも足元なんて全く見ずに歩いていく。
「ふんふふ〜んふ、あっっ!」
ついつい気を抜いて歩いていた瑠花は、案の定階段から足を踏み外した。
「っ、、、えっ、」
地面にぶつかる衝撃に備えていた瑠花であったが、その衝撃がくることはなかった。
「おっと、びっくりした〜。大丈夫?怪我してない?」
「へ、えっと大丈夫ですわ」
「そっか、それなら良かった。じゃ、私はもう行くね」
「あっ、あの!」
「ん?どうしたの?」
「お、お名前を、教えていただけませんか?」
瑠花はだんだんと声が小さくなりながらも、勇気を出してそう聞いた。
「私は華巻愛梨(はなまきあいり)だよ」
「愛梨さん、ですのね。助けていただいてありがとうございました、ですわ」
「うん。今度は転ばないように気を付けて帰ってね」
「はい」
そう言って華巻愛梨は行ってしまった。
そのころ、瑠花の顔は熱でも出ているのではないか、というぐらいに赤く染まっていた。
(華巻愛梨さん、百合ケ丘学園の制服を着ていましたわ。同じ学校ですのね)
ドクンドクン
(どうしましょう、先程からずっと動悸が止まりませんわ!はぁ、はぁ、どうなっているんですの!)
その後、ぼんやりしながら家に帰った瑠花は2日間高熱を出して寝込んだのだった。
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