第四章 語り部/経験者 ~4~
4
スマホで時間を確認する。時刻は十三時四十三分。
しかし、誰も出ない。家の中からは生活音すら聞こえない。
再びチャイムを鳴らす。
次は大きな声を出して呼んでみるが、誰もいない。誰かがいる気配すらしない。車は外に二台分置いてあるのに、二人はいるはずだが気配を感じない。
困ったな。二人とも散歩にでも出かけているのかもしれない。
そう思い、玄関先に腰かけ勝手に待つことにした。が、急に玄関の扉が開く。
僕は振り返り、立ち上がる。
「あの、少しお時間いいですか?」
「いいわよ。今日は平日でしょう? 学校はどうしたの?」
少しやつれた様子で出てきたのは
前回来たときよりも、髪はぼさぼさになり、服も皺が寄っていた。
「学校はあるんですけど、それよりも重要なことがあるんで・・・・・・」
「ダメよ。学生は学業が優先。サボり癖が付くと、常習的にサボってしまうわ」
「まあ、そうなんですけど。とても重要な事なんです」
「・・・・・・はあ。困ったわね」
と言うと巴メは俯き、すぐさま僕へ視線を移した。
「困った? 何がですか?」
「いや、こっちの話よ。もっと先に行う予定だったのに、急に来るから」
「えっと・・・・・・、話がみえてこないんですけど」
巴メはため息をひとつ吐き、首を横に振る。
まるで空虚を見つめるかのように、徐々に巴メの焦点は別の方へ向いていく。
「でもいいでしょう。こんなイレギュラーもあるわ。どうぞ、いらっしゃい」
巴メは玄関の扉を開き、家へと案内する。
「あっ、ありがとうございます」
僕は一歩目を踏み出したところで、強烈な痛みと衝撃が後頭部に走る。
地面に倒れた僕は徐々に意識が遠のいていく。
まだ意識が途切れる前、視界がぼかしのフィルターがかかったように世界が歪む。何やら光る――赤色のまだら柄のバットのような物を持った人と、巴メが話している。視界が歪んでいるせいで、顔が見えない。
バットのようなものを持った人は、僕をずるずると、家の中へと連れていく。
僕のいしきは、とぎれ始め。
そのままくらやみにひきずりこまれる。
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