第三章  元・物語主人公/藍乃夫妻 ~3~



 放課後、帰宅しながら木海月きくらげ刑事に電話をかける。


「もしもし? 水扇すいせんです。お久しぶりです」

『おぉ兎音とおとくんか。君から連絡をくれるなんて――どうしたんだい?』

「今日、天宮剣一あまみやけんいちに接触しました」

『そうか。それで、何か有益な証言は入手できたのかな?』


「いえ、何もありません。でも進展はしました」

『ほほう。どんなことが進展したのか、教えてもらえることはできるかな?』

「まず、天宮剣一と仲良くなりました」

『・・・・・・なる、ほど。いいじゃなか。友好的な関係を築けたということだね』


「はい。世に三個しかないサイン入りの天宮人形を、友好の印として貰いました」

『えっとー、うん、うらやましい・・・・・・他にはあるのかな?』


「天宮は物語についての機密情報を、主人公になる以前の藍乃あおのに教えていた可能性が浮上してます」

『それを先に言いなさい。でもそうだね、まさか別の容疑が残っていたとは驚きだ』

「これは僕の先輩の推察です。確定していない情報なので、鵜呑みにはしないでください」

『わかった、留意しておこう』


「あともうひとつ。木海月刑事に協力してもらいたいことがあります」

『いまさら何を言っているんだい。僕は君と相棒を組んだ身、君が欲しているモノを提供するのも、また相棒としての義務だよ。だからいちいちお願いしなくてもいいよ』

「そうですか・・・・・・。じゃあ改めて、僕の情報と等価交換しましょう」

『ふふ、好ましいね、その言い方』


「ありがとうございます。木海月刑事には盗聴器とカメラ、それと鏡を用意してもらいたいです」

『盗聴器、カメラ、鏡。それだけでいいのかい?』

「はい、今のところは。でもそれだけじゃないです」

『・・・・・・?』


「木海月刑事には少し、汚れ仕事を頼みたいのです」

『刑事を汚れ仕事に使うか・・・・・・悪くない。承諾しよう』

「ありがとうございます。ではその内容ですが――」

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