第三章 元・物語主人公/藍乃夫妻 ~2ー3~
物語は縄文時代から続き、それは脈々と時代を経て受け継がれていくもの。石版に彫ることから始まり、土器に描き、像を作り、書物に記し、フィルムに残し、今やあらゆる機器を用いて物語を綴っている。しかし、現代の技術をもってしてもいつ頃から物語が始まったのか、その詳細は不明であるという。だが、近年。公表はされていないが、白亜紀の時代――そして氷河期から存在していたのではないかという説が浮上している。
過去の遺物から、かつて存在していた知的動物にも人に近い知能があることは周知の事実ではあった。しかし物語が存在していたのか真偽は不明。現在でもどうして地上に存在する恐竜が絶滅したのか幾つかの説があるように、物語の存在もわからないことだらけなのだ。だが、ある考古学の研究者が太古の時代の知的動物も、物語を紡いでいたのではないかという説を論じた。
虚実か真実か。今後の研究によるのだろうが、もし太古から物語が存在していたとなれば歴史的大発見である。それと同時に、世界と物語に貢献したその考古学者は、間違いなく物語の主人公と同じく歴史に名を残すだろう。
と、天宮は今までの歴史について語ってくれた。
次いで、天宮の主人公時代の物語についてだが、結構面白かった。
物語は十数年前(僕が生まれる以前の話)まで、物語の内容をすべて知る機会が与えられるのは――オリンピックが数年に一度あるように、ある程度年月が経過してからでなければ物語の全容を知ることはできなかったらしい。断片的に知ることはできたらしいが、当時は定期的に放送されるラジオやテレビでしか(一部ではあるが)、その情報を得る機会はなかったらしい。
今じゃあ、考えられない。
だが時代の進んだ現代。各種メディアを通して、現在進行形で不定期ではあるが視聴することもできる。
その不定期の理由について天宮曰く、
――物語は時を要して進めるもの。本来省略される部分も、我々は物語として紡ぐ。数週間の準備が必要であれば数週間かけて準備を整え物語を進める。我々演者は、食事中だろうが睡眠中だろうが、物語の役を全うしなければならない。時間を短縮して、一日で物語ものがたるなど言語道断。物語への冒涜だ――
らしい。
流石はプロ、カッコイイ。
次代が目まぐるしいスピードで進歩してからは、様々な場所に設置されてあるカメラやドローンを用いて中継。役者のバイタルや脳波感知して、AIがその者の心情や気持ちをナレーションしてくれるらしい。しかもそれらは、最新の技術を用いる。特に、ステルス機能は抜群で、軍事的に利用される技術をカメラやドローンに搭載しているらしい。ステルス機能が高ければ、それだけ物語への没入感が違うらしい。
だが言えるのはここまで。詳細な部分は明かせないらしい。
これ以上話せば、守秘義務違反で上層部から罰が待っている、と微笑み言った。
代わりに天宮は僕に気を利かせてか、今の物語についても教えてくれた。
天宮
そもそも繋ぎの物語を行うこと自体不名誉なことであるが、事態が事態であるため致し方ない。
天宮はため息交じりに、嘆いていた。
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