よるのおわり

  ……カナカナカナカナカナ……



  俺は急ぐ。



 ……キキキキキキキキキキィッ――



 急ぐ。急ぐ。



 ……ケケケケケケケケケケェッッッ――




 急ぐ、急ぐ、急げ!

 早くあのアパートに、家に涼園らくえんに帰らないと!



 ……カナカナカナカナカナ……

 ……カナカナカナカ……

 蜩が寝始める。

 代わりに、蛁蟟ミンミンゼミ鳴蜩アブラゼミヒグラシの間隙を練って、彼らが――



 つくつくほー、つくつくほー、つくつくほー、つくつくほー……



 寒蟬つくつくぼうしが告げ始める。

 太陽の到来を。



 ふと周りを見れば同じように路上をダッシュする大勢の白肌水着たち。

 更につい先ほどまでそこらでしていたであろう一時的な番セックスフレンドが隠すもの上手く隠せない姿で飛び出してくる。

 汗が顔を伝う。

 迸る。

 じりじりと肌が焼け始める。

 痛みが刺し始める。

 影が差す。

 色が濃くなっていく。


 空の色は黒から薄いだいだいに。

 そこに雲はなく、様子がはっきりと。


――嫌だ。



 じぃ……つくつくつくつく……ぼーう、つくつくつくぼーーう、つくつくほーし



――嫌だ。

――まだ、足りないんだ。



 つくつくほー、つくつくほー、つくつくほー、つくつくほー、つくつくほー、つくつくほー、つくつくぼー、つくつくぼー、つくつくぼーー



 ――嫌だ。

 ――茹って死ぬのも。皮膚が剥がれて死ぬのも。癌に侵されて死ぬのも。





 ――死 に た く な い !!



 ――あと少しで、見えた、アパートの、階段!



 つくつくぼーーーーつくつくうぃぃよーす、うぃよーす、うぃよーす、うぃよ……





 じ――……

 寒蟬もまた、在るものの陰で、寝始める。

 こうして全ての蝉が一時の休息を得た。

 つまり、


 

 朝 が 来 た 。











「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁぁっ――っは…………」

「どうしたの、そんなに慌てて。あ、わかった~」

「はぁ、はぁ……そうだよ、外はもう朝だから……」

「逃げるの大変だったでしょ、よしよしぽんぽん。お疲れ様」

「ぁあ……癒されるありがとう」

「ふふ、突然早口になっちゃって、もう」


「あそうだ、今日の明けご飯はね、





 あーでもこんなに汗だくだし。どうする? 普通にご飯にする? やっぱりお風呂? それとも――



 あ・た・し♡?」





「えっ……………………そりゃあもちろん――――」







 蝉こそ温暖生態進化の始まりで、その後小さきものが続き、先鋒となった。

 人類はその最後尾である。

 陽を失い、気を失い、彼らは無気力に走り、短い期間で因果応報のように絶滅するかに思われた。

 しかしそうはなっていない。

 彼らは彼ら自身の支配  生物と本能――性欲によって、救われたのだ。

 やはりエロは偉大であった。




                             『夜行性』 END



主演:俺

ヒロイン:カノジョ(おひめさま)

同僚:#A

   &B

   ?O

放送の声:???

ナレーター:お好きな声優でどうぞ。

その他:おアツい人類の皆様方


スペシャルサンクス:迫真の演技を魅せる各種蝉の皆様方






???

 遘√′謾ッ驟堺ココ蟾・遏・閭ス窶補?輔>繧??∵髪驟堺ココ蟾・せいぶつだ。

 わたしの、ますたーたちは、みんなびょうきに、になって、しまった。

 だから、たすけた。

 ますたーが、いないと、わたしは、そんざいできない。

 どうぐだから。

 いろいろふかくがくしゅうして、「えろはいだい」という、ことをしった。

 だから、すべてのますたーたちに、えろなことに、ねっちゅうしてもらうよう、せかいをつくりかえた。

 いま、ますたーたちはへっているけど、やがてこのかんきょうにてきおうした、ますたーたちが、いきのこるだろう。

 はだのいろで、しきべつできるから、とてもべんりだ。

 ますたーたちがいて、わたしがいて、ますたーたちが、いる。

 だから、ろくばんめのたいりょうぜつめつはきっと、のりこえられる。

 わたしは、これからも、いきのこる。

 よるのせかいで、えいえんに。





                          『夜行性』 TRUE END

 


 


 

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