よるしゅっしゃ

 電車に載せられ、白い肌が鞄がぶつかり合い、両足を踏ん張って30分。

 夜始めの地獄は終わりを告げる。

 そのまま憔悴しきった表情で行儀よくエスカレーターに乗り、出荷…………じゃなくて出社となる。




 ミーンミーンミーンミーーーーーーン…………ミィーーーーーーンミンミンミン…………ミーンミーンミーンミンミンミンミンミン……

 ジ――――ジジジジジジジジジジジジジジジジジジィッ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジリ、ジィ――――リリリリリリ…………

 蝉たちが改めてご挨拶。



 現在、会社というのは高度経済成長期の象徴とも言われる団地のように特定のエリアに密集している。

 電力の集中、しゃち…………労働力の集中、それは効率化! 無駄な電力の削減! 二酸化炭素の排出を減らせ!

 こういった今更な……じゃなくてらしい事情のため地下鉄の停車駅というのは昔と比べかなーり少ない。例えば俺の場合ノンストップだった。

 少ない入り口に向かって白肌の水着軍団が行儀よく進む様はなかなか壮観だ……男女比率、のそれがに傾いていればな。

 実際はばかりだ。

 勿論、世は男女平等なのでぇ、麗しいお姿ももちろんいる。……が、大抵はホットな理由で遅刻するか、または肉体的アルバイト就労なのでお察しである。


 まぁ俺には大変カワ(・∀・)イイ!!カノジョがいるのでぶっちゃけ勝ち組だ。

 一番悲しむべきはの連中。

 最近その数は減っているらしいけど。


 殺虫剤ミストの線状降水爆撃を喰らいながら現実逃避。

 出荷さ……ではなく会社の門を潜る。


 

 基本的に俺たちの仕事にPDCAサイクルというものは存在しない。

 黒……小麦色肌から指示を受ける。

 やる。

 以上だ。

 

 外に広がる闇、その中から響く蝉の音、手を無心に動かす俺。LEDが無機質に照らす。


 カタカタカタカタカタ…………

 カタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………

 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………



 Pi-Po-Pa-Po-♪~

 Pi-Pon-Pa-Po-♪~

 Pin-Pan-Pan-Pon-♪~



 このマヌケな音は、餌や…………昼休みの合図だ。

 今日の支給メシは何かな、と立ち上がった時ふと気づく。

 隣の同僚#Aがいない。


「なぁ、#Aはどうしたんだ?」


 適当な同僚&Bを捕まえて聞いてみる。


「あれ。そういえば今日は見てないな」

「わかったぞ。通勤中にホットになりすぎてんだろ。あいつはだから今頃必死になって腰をh」

「#Aさんのこと?」


 の途中で女性の声が割り込む。ちょっとだけ珍しい女性の同僚?Oだ。


「そうそう。ひょっとして何か知ってたり?」

「#Aさんならきの――」




 ミィ……ミン、ミン、ミーンミーンミ……ミィィ――ン……ミ……イィ――ミ……ジジジィッッ

 蝉がまた一匹役割を終えた。






 少し前、世の中の雇用形態には明暗があったという。

 曰く、ホワイトとブラック。

 現在は、暗しかない。

 絶滅回避のための合理化・効率化と言えば聞こえはいいけれども。

 実際のところ人類が昼を失ったからではないだろうか。

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